独自の生産システム評価
新潟県佐渡市の「佐渡島の金山」が今年7月、新たに世界文化遺産に登録された。日本で26件目の世界遺産だ。自民党機関紙「自由民主」8月27日号は1面に、党の「佐渡島の金山世界遺産登録実現プロジェクトチーム(PT)」と「『佐渡金山』の世界遺産登録を実現する議員連盟」による登録決定を受けた合同会議の様子を載せた。また同じ号の4、5面では見開きで佐渡島の金山特集を展開した。
特集では「祝!世界遺産登録決定」との見出しで、佐渡島の金山の特徴や、世界遺産として評価された点などを地図や写真付きで紹介した。佐渡の金銀山開発が本格化した16世紀、西洋では機械による採掘が主流になったが、日本は鎖国政策で他国との交流を制限していたため技術が入ってきにくかった。そこで佐渡島では機械を使わない伝統的な手工業が発展し、その結果、高品質な金の大量生産システムが独自に生まれた。この生産技術と、効率的な金生産のために形成された生産態勢が世界遺産に資すると判断されたのだ。
日韓双方の歩み寄りにも価値
特集には新潟県の花角英世知事の「約30年の活動が実を結んだ」という喜びの声も掲載されている。約30年とあるように、世界遺産登録は一筋縄ではいかなかった。韓国政府から、金山は朝鮮半島出身の労働者が強制的に働かされた場所だという反発があったからだ。
日韓両国が折衝を重ね、佐渡市の「相川郷土博物館」で朝鮮半島出身労働者の暮らしや労働環境に関する展示を行うこと、展示施設で「強制労働」の文言を使用しないことなどで折り合い、全会一致方式の世界遺産委員会で韓国も合意した上で登録された。日本政府の代表者は朝鮮半島出身労働者を「誠実に記憶にとどめ、韓国と緊密に連携しながら佐渡島の金山全体の歴史を包括的に扱うよう引き続き努力していく」旨を述べ、韓国外務省もこの発言内容について「日本政府と行ってきた真剣な交渉の結果だ」と発表した。
世界的にも貴重な遺産が認められたことはもちろん、そこに至るまでの日韓双方の歩み寄りにも価値があったと言えるだろう。韓国では野党や左派メディアを中心に批判の声も根強いというが、とにかく日韓両国の関係者の尽力に敬意を表したいと思う。