【政党メディアウォッチ】自民総裁選 立民代表選

歴史・実績強調する自民のミス

与党・自民党と野党第1党・立憲民主党の「顔」を決める選挙がほぼ同時に行われることになった。

9月12日告示、27日投開票の自民総裁選は、岸田文雄首相(党総裁)が不出馬を表明したことで、それまで出馬を見送るとみられていた候補も名乗りを上げ、10人以上が立候補する見通しだ。同7日告示、23日投開票の立民代表選も、複数の代表経験者らが出馬を表明するなど意欲を示している。

自民機関紙「自由民主」は8月13・20日合併号や同27日号、9月3日号で総裁選に関する記事を取り上げた。13・20日号では、総裁選管理委員会(逢沢一郎委員長)の初会合が開かれ、「党が置かれている厳しい状況を受け止め、『自民党が変わる』という新しい決意にふさわしい、公平公正な総裁選を進める」「従来よりも長い期間を設けて、広く国民に開かれた総裁選を実施し、(中略)党勢の回復につなげていくべきだ」などの意見が紹介された。

27日号では総裁選の日程が決まったことと岸田氏が不出馬を表明したことが合わせて1面で大きく伝えられ、9月3日号では歴代の党総裁26人の白黒写真を使った総裁選ポスターが掲載された。キャッチコピーは「THE MATCH 時代は『誰』を求めるか?」だ。平井卓也党広報本部長によると、「戦後一貫して日本の政治を牽引(けんいん)してきた歴史と実績」「日本のリーダーを選択する選挙であるという『重厚感』」を表現したデザインだという。

このポスターを巡っては、報道番組で印象を聞かれたコメンテーターの女性タレントが「おじさんの詰め合わせ」と発言しSNSで非難を浴びるなどひと悶着(もんちゃく)あった。報道番組での発言としてかなりくだけた表現だったのは良くなかったかもしれない。ただおじさんばかりという第一印象を与えることは否めない。

ポスターはこれまでの自民党を象徴する、歴代総裁を前面に押し出したデザインであるため、岸田氏が記者会見で語った「今回の総裁選では新生自民党を国民の前にしっかりと示すことが必要」との言葉とのずれも気になる。信頼回復や刷新がテーマになるところに、歴史や実績を強調するのは逆効果ではないだろうか。候補者の論戦を通して巻き返すしかない。

立民は安全保障の議論を

月1回発行される立民機関紙「立憲民主」ではまだ代表選について扱われていないが、8月16日号の最終面には7月29日に「次の内閣」(ネクストキャビネット、NC)合宿が開かれたとの記事が載った。NCは政権担当能力を示す狙いのもと、泉健太代表を首相に見立てて設置されたもので、定期的に「閣議」を行っている。

2022年9月にNCが発表された際には、防衛相が「安全保障相」と言い換えられた上に外相と兼務するという形が取られており、党内の防衛論客の不在が浮き彫りになった。現在は兼任は解消されているものの、名称は安全保障相のままだ。

立民の安全保障政策は政権獲得を目指す政党として不十分だと非難を浴びることが多く、自民への逆風が吹く中で野党第1党が浮上し切れない要因の一つになっている。今回の代表選では現実に即した安全保障政策を強調するよう求める声も上がる。自民は刷新をアピールすべきところで歴史・実績を前面に押し出すという「ミス」を既に犯した。現時点では次の首相を決める自民総裁選の陰に隠れてしまっているが、立民の候補者がいずれも堅実な安全保障政策を語ることができれば評価をひっくり返すことも可能かもしれない。

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