各誌が一斉に報じる米民主党の大統領候補「カマラ・ハリスとは何者?」

ジョー・バイデン米大統領とハリス副大統領(UPI)
ジョー・バイデン米大統領とハリス副大統領(UPI)

「パワハラ気質」指摘

米大統領選はバイデン大統領が退き、カマラ・ハリス副大統領が民主党の正式候補になったことで一気に情勢が変わってきた。ニューズウィーク日本版(8月6日号)で同誌コラムニストの「グレン・カール」氏は「ハリスには重大な弱点がある。存在感の薄さという全ての副大統領に共通の宿命だ」と述べているが、そういえばハリス氏のことはよく分からない。改めて「ハリスとは何者か」と週刊誌が一斉に焦点を当てている。

週刊文春(8月8日号)は「カマラ・ハリスはトランプに勝てるか?」といささか早過ぎるとは思うが、いきなり勝敗予想を繰り出してきた。結論は同誌が意見を聞く識者ごとに予想が違う。つまりまだ“海のものとも山のものとも”正体が分からないのだ。当然のことである。

ただ、キャリアの階段をのし上がってきただけあって「くせの強さ」はありそうだ。他誌も書いていることだがハリス氏には「パワハラ気質」があるようで、「早稲田大学教授の中林美恵子氏」は「部下にはすごく厳しいそうです。副大統領になってすぐにスタッフが大量に離職し『ハリスの下で働くのは悪夢だ』とメディアで告発しています」と述べている。

また週刊新潮(8月8日号)でも「同志社大学大学院准教授の三牧聖子氏」が「パワハラと呼ぶのか厳しい指導というのか、司法長官や副大統領を務める現在も、少なからぬスタッフが辞めています」とし、「チームワークに問題ありと指摘されている」と語っている。この点が選挙にどう影響してくるのか。

リベラルな政治姿勢

人格面もさることながら政策はどうだろうか。「評伝『カマラ・ハリスの流儀』の著者ダン・モレイン氏」は文春に「政治スタンスはリベラルで、死刑廃止、同性婚や妊娠中絶の権利、銃規制などに取り組んできた」と伝えている。普通の米民主党リベラルの主張であるが、「慶應義塾大学教授の渡辺靖氏」は「これからトランプ陣営はハリス氏が“極左”だというキャンペーンを行ってくる」と予想する。

トランプ氏の主張が米リベラルメディアのフィルターを通して日本に伝えられることが多いが、注意すべきは、今後展開されるであろうトランプ陣営による“ハリス極左”批判を、ただ「トランプの極端な批判」とだけ見てはならない、ということである。等閑視していてはハリス氏の“正体”は見抜けないだろう。

まして、米国社会に浸透してきている“行き過ぎたリベラル”が国政や外交にまで反映してくるとなると影響は諸外国にも及ぶ。大昔のことになるが「カーター人権外交」が同盟国との関係を如何(いか)に傷つけたかという教訓を今一度振り返るべきだろう。

さて“アメリカが抱える二大懸念事項”と言えば移民問題とインフレだが、「シドニー大学米国研究センターのジャレド・モンシェイン氏」は文春で「副大統領としては、あまり有効な解決策を打ち出せなかった」とハリス氏を批判する。前出のカール氏も「無能で何の業績も残していない」(NW日本版)と手厳しい。

実際に「不法移民問題を任されていましたが、長らく現場への視察にも行かず、中南米の国々との交渉も不発でした。増加する不法移民は大統領選の最大の争点の一つとなっており、彼女のアキレス腱となっています」と新潮で三牧氏も指摘している。移民問題で明確な方針を打ち出しているトランプ陣営は“極左”批判ととともに、この点を追及してくることが予想される。

副大統領候補に注目

選挙の行方を左右するのが「副大統領候補選び」だというのは各誌に共通するものだ。選挙の趨勢(すうせい)を左右する激戦区から候補を選んでくるとか、さまざまな予想が可能だが、これは今月19日から22日シカゴで行われる民主党大会までに固まってくるだろう。

オプラ・ウィンフリーという超有名なテレビ司会者がいる。「彼女を副大統領候補にしたらカマラは圧勝するだろう」というコラムがあったが、悪い冗談だ。

各誌のトランプ対ハリス戦の報道に注目する。

(岩崎 哲)

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