トップオピニオンメディアウォッチ旧統一教会 特定の人・団体のため法解釈を突然変える政府の暴走と「手を貸す朝日」

旧統一教会 特定の人・団体のため法解釈を突然変える政府の暴走と「手を貸す朝日」

故安倍晋三元首相の追悼集会であいさつする岸田文雄首相 =2023年7月8日午後、東京都港区の明治記念館
故安倍晋三元首相の追悼集会であいさつする岸田文雄首相 =2023年7月8日午後、東京都港区の明治記念館

文書開示で国が敗訴

40年続いた法解釈を突然変える。こんな恣意(しい)的なことが許されるのか―。1カ月前に大阪地裁で一つの判決があった。黒川弘務東京高検検事長の定年を延長した2020年の閣議決定を巡って政府が関連文書の不開示を決めた決定を取り消すよう求めた訴訟で、大阪地裁は6月27日、不開示決定を取り消す判決を下した。

検察官の定年は検察庁法で「63歳」と定められているが、政府は黒川氏の定年直前に法解釈を改め、国家公務員法の延長規定を初めて検察官に適用した。その閣議決定を巡る文書開示訴訟で国は敗訴した。これを朝日は6月28日付1面トップで報じ、同30日付には「暴走繰り返させぬため」と題する社説まで掲げた。

訴訟を起こしたのは「国を相手に数々の情報公開請求訴訟を闘い、自民党派閥の裏金問題を明るみに出した」上脇博之・神戸学院大学教授で、「政府が特定の人物のために法解釈を変えるという、恣意的で許されないことをやったのだと認めた画期的な判決だ」と気勢を上げている。

では、政府が特定の宗教団体のために法解釈を突然変える「暴走」はどうか。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る解散請求の要件についてである。政府は22年10月18日まで要件に「民法は含まない」としていた。その閣議決定もあった。地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教に解散を命じた1995年の東京高裁決定は「刑法等」とし、それが要件に関する法解釈とされてきたからだ。刑法等の「等」は刑事罰を伴う他の法律(例えば武器等製造法)とみるのが常識で、過去に解散命令が確定したのは刑事事件として摘発されたオウムと明覚寺の2例のみだ。

それが10月19日の国会答弁で岸田文雄首相は「等」には「民法も含まれる」と一夜にして法解釈を変えた。閣議決定はなく、論議した会議すら不明である。それにもかかわらず朝日は疑念を封印し、連載「深流 安倍氏銃撃から2年 上」(9日付)では「秘密会議」なるものをつくり出し“正当化”に手を貸している(拙稿16日付参照)。

(深流4 安倍氏銃撃から2年:上)秘密会議、一転した首相答弁 解散命令要件「修正しないと」:朝日新聞デジタル (asahi.com)

関連記事 メディアによる「隠蔽」が作るフェイクニュースと悪意ある世論操作 | 世界日報DIGITAL (worldtimes.co.jp)

朝日記事による自白

だが、皮肉にも朝日記事は解釈変更がいかに恣意的に行われたかを“自白”した。それは次なる一文だ。「政府はその方針を変えざるを得ない状況に置かれていた。教団への批判が高まり、『社会の雰囲気が、過去に高額献金が問題視された頃とまるで違った』(文科省関係者)。消費者庁の有識者検討会も教団への解散命令請求を視野に入れた調査を促した」

解釈変更は「社会の雰囲気」と「消費者庁の有識者検討会」の圧力の結果だと朝日自身が認めている。それは本紙連載「脅かされる 信教の自由 第一部 岸田政権の暴走」が明らかにした「全国弁連とマスコミ報道鵜呑み」(1日付)「河野消費者相の越権行為」(3日付)の2点のことだ。

関連記事 【連載】脅かされる信教の自由① 第1部 岸田政権の暴走 全国弁連とマスコミ報道鵜呑み 内閣改造で公正さ捨てる

関連記事 【連載】脅かされる信教の自由③ 第1部 岸田政権の暴走 河野消費者相の越権行為

それで文科省は岸田首相の解釈変更を受け解散要件の証拠もないのに“証拠集め”に狂奔する羽目に陥った。これも朝日記事は“証言”する。「裁判所に請求を認めてもらうには、分厚い証拠」を集めねばならない、「新たな材料集めに着手した」「民事訴訟になっていない事例も含めて…『100人以上からヒアリングを』。政府関係者によると、そうした目安のもと聞き取りが行われた」―と。明らかに初めに解散請求ありき、である。

関係者は不安障害に

朝日記事は政府関係者のこんな思いも書く。「30年後の教科書に『ここから宗教弾圧が始まった』と書かれるかもしれない大きな判断。汗が出て眠れない夜が続いた」。宗教弾圧への加担を恐れ、不安障害にまで陥っている。岸田首相は何と罪深いことか。

朝日よ、検察官の定年を巡る突然の法解釈変更に「暴走繰り返すな」と憤るなら、何ゆえに宗教法人の解散要件を巡る突然の法解釈変更の「暴走」は是とするのか。あっちはダメ、こっちは良し。それをダブルスタンダードと言う。すなわち偽善である。

(増 記代司)

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »