
国名を間違う失態も
パリ五輪の開会式が26日、フランス・パリのセーヌ川を中心に盛大に行われた。200を超える国・地域の選手団は、船上でパレードに参加。スタジアム以外で選手の入場が行われるのは五輪史上、初めてという。
降りしきる雨の中、選手らは、国旗を掲げ、自国の名が呼ばれると川岸の観衆に向かって歓声を上げ、手を振るなどしていた。
その中で一つ気になっていたのは台湾。今回も「チャイニーズ・タイペイ」の名で参加しているが、フランスの放送で「台湾です」と紹介され、台湾からは歓迎の声が上がっているという。台湾の国営通信社・中央通信社が運営する「フォーカス台湾」は、「テレビ局『フランス2』の司会者は『チャイニーズ・タイペイ。われわれのよく知る台湾です』と紹介した」と報じた。
一方で、韓国の選手団を紹介する際に「朝鮮民主主義人民共和国」と呼ぶというハプニングもあった。国際オリンピック委員会(IOC)によると、この件についてバッハ会長が韓国の尹錫悦大統領に直接電話し、謝罪したという。事が事だけに、早めに火種を消しておこうということだろう。
「最後の晩餐」もじる
一方、ネット上で炎上しているのが、ドラッグクイーン(女装パフォーマー)やLGBTQ(性的少数者)らを多数起用した開会式のパフォーマンスだ。
特にレオナルド・ダ・ビンチが描いたイエス・キリストの「最後の晩餐(ばんさん)」のパロディーはキリスト教会、保守派から強い反発を招いたようだ。
仏放送局フランス24によると、カトリック系の「フランス司教会議」は27日、声明で、「このセレモニーには残念なことに、キリスト教を物笑いの種にするようなシーンが幾つも見られた」と遺憾の意を表明した。
どのシーンかの指摘はないが、最後の晩餐に似せたと思われる「フェスティビティー」と呼ばれた部分とみられているという。
後光に似せた頭飾りを付けたレズビアン活動家でDJのバルバラ・バッチ氏が晩餐の中央に立ち、左右にドラッグクイーンらしき人々がポーズを取っている。司教会議は「大陸中のすべてのキリスト教徒が、この度を超えた、挑発的なシーンに傷つけられたと思う」と表明した。
また、国内の保守派政治家らもこの「LGBTQのパフォーマーと人種的にかなり多様な出演者らを起用した『ウォーク(覚醒したという意味。差別などに特に敏感という意味で使われる)』なパフォーマンスに不快感を表明した」という。
ダ・ビンチの出身地イタリアでは、右派メローニ政権のサルビーニ副首相が、X(旧ツイッター)で、「世界中の何十億人ものキリスト教徒を侮辱するものであり、五輪のスタートとしては不適切。汚らわしい」と強く非難した。
開会式の芸術監督を務めたのは、シェークスピア作品の翻案でも知られる俳優で舞台演出家のトマ・ジョリー氏(42)だ。
ジョリー氏は自身も同性愛者であることを公表しており、フランス24によると、開幕前に、セレモニーは「多様性」と「異質性」を祝うものになると語っていたという。
27日の会見では、このパフォーマンスに込めた意味について「破壊したり、あざ笑ったり、衝撃を与えたり」することを狙ったものではなく、「何よりも伝えたかったのは、愛のメッセージであり、インクルージョン(包括性)のメッセージであり、分断を意図してはいない」と主張したという。
「寄せ集め」英紙酷評
フランス24によると欧州のメディアの反応はさまざまだ。
フランスのスポーツ紙レキップは、「世紀の記憶を残した」と評価、ルモンドは「突出した開会式が批判を受けているが、否定論者らはこんなことは起きるはずがないと思っていた」と肯定的に伝えている。
一方、英紙ガーディアンは「パリと言えばセンスの良さで知られているが、これではまるで、ごちゃごちゃの寄せ集めだ」と酷評した。
(本田隆文)