地域経済と国防意識の両輪必要
自民党機関紙「自由民主」は、7月9日号から新連載「歴史を紡ぐ~日本遺産のストーリー~」をスタートした。「日本遺産」とは、地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリーを指し、文化庁はこれまでに100以上を認定している。
7月23日号では、2015年に日本遺産に認定された長崎県の「国境の島 壱岐・対馬・五島」を取り上げた。日本遺産のストーリーでは、島々が古代から日本と中国大陸とを結ぶ海運の要衝として栄えてきたことをクローズアップし、外国との交流の歴史などを紹介している。
自由民主では、対馬や壱岐を舞台に弥生時代から繰り広げられた交易の様子や、国防の最前線としての役割を果たした歴史などについて書かれている。また1607年から約200年間、日朝修好の象徴である朝鮮通信使が来日していたことや、朝鮮半島に非常に近い地理的背景から現在は1年で約12万人(昨年)の韓国人観光客が訪れるなどインバウンド需要の高まりがあることについても紹介した。
長崎県のこれらの島々と言えば、今年4月28日に衆院補欠選挙が行われた3選挙区の一つ、長崎3区に含まれる地域だ。同補選は自民が候補を立てず、立憲民主党と日本維新の会の候補者が争った。両候補とも離島振興策について力を入れて訴えたが、重視する点は立民が地域経済、維新が安全保障に偏っていたことが残念だった。離島振興に対する国民の関心を高め、継続するにはこれらを両輪とする必要があるからだ。
対馬はかつて「防人(さきもり)の島」と呼ばれたが、わが国の周辺国が覇権主義的動きを強める中で、再びその重要性は増している。その上で、離島とそこに暮らす住民を支えるには地域経済の活性化が必須であり、国民に対しこれらを関連付けて啓発することが重要だ。
対馬には韓国人観光客が多いが、日韓関係が悪化すればその数が激減するなど影響を受けやすい。最近は韓国人観光客のマナーを巡ってトラブルも起きているという。対馬に限らず、離島でインバウンド依存を減らし国内からの旅行者を増やすには、観光地としての魅力を発信するのはもちろん、旅行が国防につながるというイメージを伝えることも有効だろう。
(亀井 玲那)