特有の不安・負担に実感必要
各党が女性議員を増やすための取り組みに力を入れている。選挙制度の改革案や党からの金銭的支援があるが、それ以上に心理的障壁を取り除く政界全体の努力が必要だ。
世界経済フォーラム(WEF)が6月12日に発表した各国の男女平等度を示す「ジェンダーギャップ指数」2024年版で、日本は146カ国中118位だった。過去最低だった前年の125位からは七つ順位を上げたものの、先進7カ国(G7)の中では依然として最下位だ。近隣国の韓国(94位)や中国(106位)よりも低い。
総合順位が上がったのは、昨年9月の内閣改造で19人の閣僚のうち5人が女性であることが評価されたからだ。しかし、政治分野(113位)と経済分野(120位)が足を引っ張っている事実は変わらない。
立憲民主党機関紙「立憲民主」の7月19日号は、女性の政治参画について民主党政権下で男女共同参画担当相を務めた同党の中川正春衆院議員にインタビューを行っている。立民が党として掲げる「パリテ(男女半々の議会)」実現について、中川氏は「男性と女性が同じ人数生きているのだからパリテは当たり前。今の状況がいびつなだけです」と語り、重要性を強調。自身が会長を務めてきた超党派の「政治分野における女性の参画と活躍を推進する議員連盟」が挙げた、女性の候補者比率を政党交付金の支給額に連動させる制度案なども説明した。
女性議員を増やす必要があることは各党の共通認識になっているが、その方法については意見が分かれている。立民はパリテ実現のため、候補者の一定割合を女性にする「クオータ制」の導入も求めている一方、自民党は慎重な立場だ。
国会に今より女性議員が多ければ、違う結果になったのではないかと思われる例は幾つかある。例えば2019年に導入された軽減税率制度で、生理用品が適用外になったことだ。現行の制度では、そもそも軽減税率の対象になるのは酒類・外食を除く飲食料品と週2回以上発行される定期購読の新聞に限られている。生理用品だけでなく、子供用おむつなど、男女平等や子育て支援に資するような品目が入る余地もない。
昨年6月に成立した「LGBT理解増進法」も同様だ。同法は権利や罰則ではなく基本理念を定めた「理念法」だが、だからこそさまざまな場面に広く反映され影響を及ぼす可能性があるものだ。多くの女性から、同法が「心は女性」と自称する悪意を持った男性に利用され、女性用トイレや更衣室、浴場などで混乱が起きることへの懸念の声が上がったが、十分に議論されぬまま成立した。
女性特有の不安や金銭的負担を実感として訴えられる議員を増やす必要があるが、日本財団が20年に1万人の女性を対象に行った政治に関する調査では、政治家になりたいと「思う」「やや思う」と答えたのは全体の8%で、「思わない」「あまり思わない」が88%だった。「自分には向いていない」「自分の生活や家庭と両立できる自信がない」といった意見の他に、政治家のイメージの悪さも理由として挙げられている。
内閣府の調査では、議員活動や選挙活動中に、有権者や支援者、議員などから何らかのハラスメントを受けた人の割合は男性より女性が高く、特にセクシュアルハラスメントの被害が顕著だ。各党が対策を講じているが内容にはばらつきがある。候補者への支援に差が出るのは致し方ないが、候補者を守る仕組みに差が出るべきではない。政党に所属しない人も含む全ての人を対象にした対策が必要だ。
(亀井 玲那)