トップオピニオンメディアウォッチ日本学術会議の法人化 独立を主張しながら独善に陥っている朝日

日本学術会議の法人化 独立を主張しながら独善に陥っている朝日

最も熱心に取り上げ

日本学術会議の法人化方針を巡って確執が続いている。朝日は7月12日付社説「学術会議改革 足を止め 真摯な対話を」で、「内閣府の作業部会が議論を中間的にまとめたが、学術会議側の懸念は解消されていない。いったん立ち止まり、真摯(しんし)な対話を重ねるべきだ」と書いた。「溝を埋めぬまま法案化を進めれば、再び対立が限界まで高まりかねない。まず、内閣府は学術会議の意見に真剣に耳を傾けるべきだ」との主張だ。

朝日はこの日本学術会議問題に執着し、一番熱心に取り上げている。他紙に比べ社説で扱う回数も多い。

ことの発端は2020年10月、日本学術会議が推薦した新会員候補105人の内、6人が任命権者である菅義偉首相(当時)によって任命を拒否されたことだった。日本学術会議がこれに反発した。

23年12月には、政府が有識者懇談会の報告を受ける形で日本学術会議を法人に移行させる方針を表明した。日本学術会議は法人化には反対しないものの、会員の人選問題などでもめている。

そもそも日本学術会議は「わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させる」(日本学術会議法2条)ため、1949年に発足した。内閣府の特別の機関の一つである国立アカデミーには、年間約10億円の予算が投じられている。首相が任命する会員は特別職の国家公務員(非常勤)という立場である以上、人選の透明化を図るのは当然だ。

独立存在しない中国

日本学術会議において問題視されるべきは、その偏向性だ。2015年9月7日、当時の大西隆日本学術会議会長と韓啓徳中国科学技術協会会長は北京の中国科学技術協会で、両機関における協力促進を図る覚書を締結した。

中国科学技術協会とは、中国の最高意思決定機関である共産党常務委員会の下にある「中共中央書記処」の管轄下にある。同協会は軍民融合を中国全大学の研究や有力な民間企業に呼び掛けるセンターとなっている存在だ。

そもそも「革命は銃口から生まれる」という毛沢東元主席の軍事力重視路線が国家のDNAにある中国は、あらゆる力を糾合して軍事力強化に役立てようとする。中国は戦時を想定し、徴用を含む民間資源の軍事利用を目的とした国防動員体制を整備してきた。

近年語られるようになった中国の「軍民融合」路線は、戦時に限らず平時から民間資源の軍事活用を推進するものだ。そこではアカデミズムの独立などはなから存在せず、国力増強が優先される。

その中国アカデミズムの中心軸的役割を担っている中国科学技術協会と日本学術会議が組むということは、日本のアカデミズムの研究成果が中国に流れ、その研究成果や編み出された技術が軍事転用される可能性があるということになる。

ダブスタに目つぶる

日本学術会議は1950年に「戦争を目的とする科学研究には絶対従わない決意の表明(声明)」を、また67年には「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を発出している。

さらに同会議は2017年3月、日本の大学や研究所あるいは民間企業が防衛装備を生産する事業に関わるのは、「軍事目的のための科学研究を行わない」という日本学術会議の趣旨に反するとして反対声明を発表した。

だがこれでは、日本の軍事開発には関与しないが、中国の軍事開発への協力には目をつぶるということになる。この日本学術会議のダブルスタンダードに目をつぶっている朝日の社説も、かなりいい加減だ。

朝日社説は「(日本学術会議の)独立性、自律性」を損ねては「国家の損失」だと主張する。だが独立を主張しながら、その実、独善に陥っていないか、自律を主張しながら身勝手さが露呈していないか、しっかり検証されるべきだ。

(池永達夫)

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »