
「陰謀論」として非難
NTT関連サイトに「フェイクニュース」に騙(だま)されないための“指南”がある。それにはフェイクニュースはデマや事実に基づかない情報で構築されたものだけでなく、悪意を持った人が世論を操作するために行うものもあり、それに騙されない「メディアリテラシー」が必要とある。
「隠蔽(いんぺい)」もフェイクの一手だろう。本紙10日付は米国のリベラルメディアがバイデン米大統領の認知機能低下について気付いていながらその「隠蔽」に加担してきた疑いがあると報じている(ワシントン山崎洋介氏)。保守メディアがそれを問題にすると彼らは「陰謀論」として非難してきただけに悪質だ。「隠蔽」はフェイクニュースを作る左派メディアの常套手段と言っていいかもしれない。
朝日の連載「深流 安倍氏銃撃から2年」(9~11日)の記事からそんな「隠蔽」が読み取れる。9日付1面に「秘密会議 一転した首相答弁 解散命令要件『修正しないと』」との見出しで、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡って岸田文雄首相が宗教法人に対する解散命令要件を一夜にして変えた背景を書く。
一夜とは―。解散要件について岸田内閣は2022年10月14日に「民法の不法行為は入らない」との閣議決定を行い、同18日午前の国会答弁で岸田首相はそう言明したが、翌19日午前の国会答弁では一転して「民法も含む」と、ちゃぶ台返しをしてみせた。この間、閣議は開かれておらず、いったい何を根拠に解散要件を一変させたのか、疑問が持たれていた。
「秘密会議」持ち出す
朝日記事は、18日午後、「首相官邸の一室。緊急会議が秘密裏に開かれていた」とし、「首相秘書官や法務省、文化庁の幹部が議論」して首相答弁の「軌道修正」を行ったとしている。従来の情報では、解散要件を巡る会議らしいものは19日早朝の磯崎仁彦官房副長官との会合しかなく、会議開催による解釈一転に疑問が持たれてきた。それがここにきて朝日は「秘密会議」を持ち出してきたのである。
この会議に首相や閣僚が加わっていた形跡はない。朝日記事にも書かれていない。首相秘書官と一部官僚との「議論」である。これが果たして閣議決定を一変させる「会議」と言えるのか。議論が事実としても、それは単なる会合にすぎない。それをなぜか朝日はことさら「会議」とするのである。ここに隠蔽工作が浮き上がってくる。
何を隠しているのかというと、本紙既報(5日付「脅かされる信教の自由⑤ 第一部岸田政権の暴走 法治国の基盤失う『朝令暮改』」)の小西洋之立憲民主党参院議員と岸田首相との「談合」による「政治暴走」についてである。小西議員は23年8月22日にユーチューブで解釈変更の舞台裏を「前日(18日)から首相官邸に当たって、解釈を撤回するように、撤回するときの理由まで授けた」「改めて岸田政府全体で議論したって言ったらいい。そこの部分は追及しないからって言ったら、岸田総理はその通り言った。ただ、これ嘘(うそ)なんですよ」と暴露した。嘘は「岸田政府全体で議論」のことである。
面会に触れない朝日
実際、19日の国会質疑は小西議員と岸田首相との「談合」通りの展開となった。本紙5日付は国会開催直前に岸田首相が小西議員と面会している「首相動静」まで紹介した。朝日はこれらに全く触れず、小西氏同様「岸田政府全体で議論したって言ったらいい。そこの部分は追及しない」を地で行き、「議論」を証拠付けるかのように唐突に「秘密会議」なるものを記事にした。それだけでなく「政治暴走」の数々を何のためらいもなく書き綴(つづ)る。それを紹介するには紙幅が尽きた。
冒頭に紹介したフェイクニュース対策は「発信元が明らかなメディアから情報を得ることも一つの手段」とするが、とんでもない。発信元が明らかでも「悪意を持った人の世論操作」は堂々と繰り広げられているのである。
(増 記代司)