トップオピニオンメディアウォッチ蓮舫氏を抑え都知事選2位となった石丸伸二氏の正体に迫った新潮

蓮舫氏を抑え都知事選2位となった石丸伸二氏の正体に迫った新潮

演説をする石丸伸二氏 =20日午前、東京都新宿区

「人とカネ」詳報なし

東京都知事選で一大旋風を巻き起こした石丸伸二・前広島県安芸高田市長(41)。週刊誌が放っておくわけもなく週刊新潮(7月18日号)が早速取り上げた。曰(いわ)く「『蓮舫』を“終わった人”にした『石丸伸二』の正体」。

小池百合子都知事には及ばなかったものの蓮舫前参院議員を37万票も引き離して2位となったのは大健闘だ。東京に基盤もなく、少しネットで有名になったからといってもそれは全国でのこと。都の有権者にどれだけ支持されるかは未知数だった。

ところが遊説中心の選挙戦で、日に日に聴衆が増えていき、ボランティアも数多く駆け付けた。普通、選挙運動を考えると、その費用はどこから出ているのか、組織的な人員動員はあったのか、と勘繰りたくなる。いくらボランティア(自発・志願)だといっても揃(そろ)いのポロシャツを着て、手には旗やチラシを持ち、移動費や飲食代など、人数が多ければ相応に膨大な経費がかかるはずだ。

ドトールコーヒー創業者の鳥羽博道名誉会長、KDDI創業者の千本倖生・京都大学経営管理大学院特命教授などが支援したと伝えられる。同誌は千本氏へのインタビューを載せてはいるものの、この肝心の「人とカネ」の出所についての詳報はない。

具体的な政策示さず

とまれ、同誌の記事は石丸氏の「正体」についての論評だ。それを見ていくと「コラムニストの辛酸なめ子氏」は「頭の回転が速くて相手を言い負かしてくれそうな人を好む層」が、既存の「政治を変えてくれるかも、と期待して(石丸氏に)投票したのでしょう」と分析する。

蓮舫氏では「言い負かして」くれそうにないと思ったのだろう。「政治アナリストの伊藤惇夫氏」は蓮舫氏を「タレント出身議員として、もはや“オワコン”なのかも」と評したが、「“いつも他人の文句を言っている”というイメージ」や「批判ばかり」では相手を「論破」したことにはならない。今回はここで明確な“選手交代”が行われたような気もする。

「石丸さんは“SNS選挙第一号”だといえます」と言うのは「信州大学特任教授の山口真由氏」だ。市長時代から「切り抜き動画」をアップして市議との「対決」やりとりをアップして人気を博していた。今回の選挙中も忙しい中、どう時間をつくってやったのだろうか、動画を配信していた。動画はアップされていれば視聴者が勝手に見るから、選挙戦は24時間できることになる。新しい選挙スタイルを築いたとも言えよう。

だが、ネット選挙のデメリットもある。山口氏は「ポピュリズムに傾くおそれが指摘されてきました」として、「端的に言えば“中身が薄い”」と断じる。石丸氏は「“自分がどう見えるか”には徹底的にこだわる一方、“何をしたいのか”にはこだわりが感じられ」ないとし、「対決型の政治ユーチューブでは受けるでしょうが、政策を実現させるためには非常に難しいと思います」とその限界を指摘している。

確かに、石丸氏は東京で何をやりたいのか、具体的な像を有権者に示したのだろうか。終わってみれば単に「蓮舫を破った」ことしか残っていない。彼の主張として刺さったものの痕跡がないのである。

会見でも「石丸構文」

「評論家の唐沢俊一氏」は「石丸氏の手法は、自分が勝てそうな土俵に上がって言い負かしやすい相手に勝負を挑み“勝った”と称しているだけです」と述べる。「果たして政治家として正しいのでしょうか」と疑問を呈するが、その通りだ。

今後のことについて「広島1区」での出馬を示唆した。岸田文雄首相の選挙区である。そこが「勝てそうな土俵」に見えているのかもしれないが、この発言からも「政治家として何がしたいのか」が伝わってこない。

質問に質問で返す「石丸話法」「石丸構文」は記者会見でも遺憾なく発揮された。一見、論争強さを感じさせるが、自分の考えの土台がないことを吐露しているようなものだし、地位のある者がそれをすれば単なる「パワハラ」「いじめ」にすぎない。

話題は尽きそうにないし、掘れば出てくるものもありそうだ。今後の他誌の石丸記事に期待しよう。(岩崎 哲)

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