左翼学者と朝日の欺瞞的護憲論を白日の下に晒した西修氏の新著

改憲テーマ浮き彫り

駒沢大学名誉教授の西修氏(比較憲法学)が今年3月に『憲法一代記』(育鵬社)を上梓(じょうし)した。副題に「世界195か国の憲法を研究した私の履歴書」とある。440ページに及ぶ力作で6月に入ってようやく読み終えた。その読後感はずばり、この一冊で憲法のすべてが学べるのである。

西氏の業績の最大の特色は、連合国軍総司令部(GHQ)で日本国憲法の原案を作成した8人を含む「歴史の証人たち」47人をインタビューし、米国の国立公文書館をはじめ各地の研究所などを訪ね一次資料を取得、それを駆使して日本国憲法成立過程を研究し、また世界のすべての国々を対象にした比較憲法を探究したことである。

それをなぞっていくだけで日本国憲法の「正体」が露(あら)わになり、何をどう改正すべきか、改憲テーマが浮き彫りになる。と同時に左翼学者と左翼メディアとりわけ朝日の欺瞞(ぎまん)的護憲論が白日の下に晒(さら)される。本欄では朝日を取り上げる。

一つは1990年に湾岸戦争が勃発した際の論調である。国際貢献を問われた政府は91年に国際連合平和維持活動(PKO)協力法を成立させ、自衛隊部隊を派遣したが、左翼は「軍国主義反対!」「憲法9条壊すな」などと叫ぶ反対デモを繰り広げ、朝日も同様の反対キャンペーンを張った。国際法上も憲法解釈上も一切問題がなく、今ではほぼ全部の国民がPKO部隊を軍国主義でも違憲でもないと認識し、反対はわずか1・5%にすぎない(2023年9月、内閣府調査)。それでも朝日は執拗(しつよう)に反対した。

非現実的な提言行う

1995年には非現実的かつ国際常識に反する恐るべき提言を行った(論説委員会編『朝日新聞は提言する 国際協力と憲法』朝日新聞社)。日本が「良心的兵役拒否」を目指し(つまり国を挙げて非武装とする)、自衛隊以外で平和維持活動を行い、自衛隊を国土防衛的な組織に改編。2010年までに陸上自衛隊を半減させ、イージス艦やP3C対潜哨戒機を大幅削減させるというのだ。

これに対して西氏は、良心的兵役拒否は国内で施行されるもので、こんな呼び掛けに応じる国など存在しない。第2代国連事務総長ハマーショルドは「PKOは軍隊の仕事ではない。しかし軍隊でしかできない仕事」と述べており、日本がそれを拒否すれば、国際社会から卑怯(ひきょう)者とみられると指摘し、さらにこう問うた。

―自衛隊を大幅削減すれば周辺諸国の恫喝(どうかつ)に脅かされるばかりか、日本防衛の負担が増えた米国が日米安保条約の解消を申し入れるかもしれない。そうなれば「日本国と日本国民に多大な被害を与える」ことになる。「その責任を朝日新聞はどのようにして負うつもりなのか」と。

もう一つは、安倍晋三内閣が制定した平和安全法制(16年3月施行)についてである。同法制は全面的な集団的自衛権行使ではなく、「わが国の存立を全うし、国民を守るため」の限定的な集団的自衛権行使であるにもかかわらず、朝日は「限定的」を省いて「わが国が他国を守るための戦争に参加することが許されるのか」と論点をすり替え反対した。

政府解釈も理解せず

極め付きは政府解釈の捏造(ねつぞう)である。17年5月9日付社説で、「(政府は)必要最低限の武力と実力組織の保有は、9条の例外として許容される―。そう解されてきた」と論じた。これは全くの誤りで、政府解釈は一貫して「我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織としての自衛隊は、憲法に違反するものではない」とし、自衛隊の存在を「9条の枠内」と位置付け合憲と説明している。朝日は政府解釈も理解せずに平和法制批判を繰り広げてきたのだ。その疑問を西氏は論説主幹に問うても木で鼻を括(くく)ったような回答しかなかったという。

一事が万事こうである。そういえば、元京都大学教授の高坂正堯氏が90年代初頭に行った講演で「戦後日本は朝日新聞の主張と逆のことをして成功してきた」と語っていた(『歴史としての二十世紀』新潮選書)。西氏の『憲法一代記』も朝日の主張と逆のことをすれば成功すると語っている。

(増 記代司)

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