ネット上で物議醸す
NHKと聞くと、筆者はすぐ「ラジオ体操」を思い浮かべる。子供の頃、夏休みには子供会で朝集まってラジオ体操をやったし、妻は毎朝、家で健康のため「ラジオ体操第1~」というEテレから流れる音声に合わせて体を動かしている。
朝の体操は老若男女、誰もが手軽に行え、身も心もほぐしてくれるので、1957年からの超長寿番組となっている。NHKがなくなってもこの体操だけは残したいと思っている視聴者は少なくないだろう。
ところが、子供には見せられない体操を放送するNHKはいらないと物議を醸す体操がある。5年前に一度放送されたきりなのだが、今年5月、その動画がインターネット上に投稿されてアクセスが殺到。X(旧ツイッター)では「破廉恥だ」「早くNHKをなくしたほうがいい」と炎上。しかも国会でも取り上げられる事態になっている。
その体操とは「ジェンダー体操」。筆者も先月中旬、その異常さを耳にしネット上から探し出した。ヒットしたのは1分あまりの動画。見ると、ピンクの幕を垂らした、観客のいるスタジオに、レオタード姿の白人女性2人が登場してきた(後にもう1人、日本人の男性が加わる)。
その直後、中央に立った女性が「この動画を見た日には、あなたもいっぱしのジェンダー通よ」と英語で語り掛ける。そして「Sex Sex Sex Sex」と連呼しながら、体をくねらせて体操を続ける。この時、画面下には「Sex…」の文字とともに「性別ってなあに? 性別ってなあに?」という日本語の字幕が付けられている。さらに女性は「男性 女性 インターセックス その他もろもろ」と叫び続ける。インターセックスとは男性・女性の中間のような体を持った状態のことだ。
羞恥心から人を解放?
これだけでも、かつて「教育テレビ」と言われていたEテレの良識を疑うに十分だ。しかしこの後、ラジオ体操の功績を帳消しにすると言っても過言でないシーンが続く。件の白人女性は男女の性器の英語名称を叫び、NHKはそれにカタカナの字幕を付けている。その単語の下品さを示すには、ここで書いた方がいいのだが、筆者まで下品になりたくないのでその単語名は省略する。この間、画面右上には、「ダンスでおさえるLGBTQ当事者が考案!ジェンダー体操」との説明が貼り付けられていた。
このジェンダー体操は2019年、Eテレ「バリバラ」(「バリアフリーバラエティ」の略)が放送したもの。性器の名称を連呼させて視聴者を“洗脳”し、羞恥心から人を解放しようというのがこの体操の狙いなのだろうから、本来は何度も放送すればいいはずだ。しかし、1回きりの放送となったのは批判が巻き起こって、さすがに「マズイ!」と判断したのではないか。
NHKのLGBT問題の取り扱いの偏向性をウオッチしている筆者としては当時、この番組を見逃したのはうかつだった。しかし、ネット時代だ。問題番組は忘れた頃に持ち出される。
あるXユーザーが先月初め、グローバリズム批判の一環として、ジェンダー体操の動画をアップしたところ、たちまち拡散。「子供に悪影響しかない」「早くNHKをなくした方がいい」「受信料返せ」と怒り心頭の書き込みが続いた。先の衆院東京15区補選に日本保守党から出馬した飯山あかり氏のツイートはアクセス610万を数えた。
参院では逃げの答弁
そればかりか先月16日、参議院総務委員会で「NHKから国民を守る党」の齋藤健一郎議員がこのジェンダー体操を取り上げた。質問通告をしていなかったこともあり、答弁者の小池英夫・NHK専務理事は「NHKは放送法にのっとって国民に資するような放送、理解増進情報も含めて対応していくのが使命だと考える」と、逃げていた。
ただ、齋藤氏には一つ誤解があった。動画の炎上は先月だったものだから、1年前に成立したLGBT理解増進法がジェンダー体操につながったのではないか、と発言していたが、話は逆。あんな体操の放送を許すほど、LGBT偏重を続けるNHKの報道の在り方が今も批判が絶えない法律の成立につながったのである。
(森田清策)