GDPマイナス「円安の弊害」強調するも当面の対策指摘しない各紙

都市のイメージ(Photo by Vlad Busuioc on Unsplash)
都市のイメージ(Photo by Vlad Busuioc on Unsplash)

消費の回復に遅れも

17日付日経「消費回復へ賃上げの持続力高める改革を」、産経「民需主導へ歩みを強めよ」、18日付毎日「円安の弊害を直視せねば」、本紙「消費の回復へ円安を止めよ」

2024年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値が、実質で年率2・0%減と2四半期ぶりにマイナスとなったことを受けて、社説で論評を掲載した4紙の見出しである。いずれもマイナス成長への転落について消費の弱さを指摘したが、列挙した通り、論評には予想以上に違いが出た。

日経は、「長引く物価高が家計の節約志向を強め、景気の先行きを不透明にしている」と指摘し、消費の回復には物価上昇を上回る勢いで賃金が増える必要があるが、「最近の円安で実現が遅れそうな気配だ」と懸念する。

1~3月期は認証不正問題で一部自動車メーカーの生産・出荷が滞り、個人消費が耐久財を軸に減り、輸出や設備投資の落ち込みにも波及した。

それでも同紙は、筆者も同感だが、「自動車の生産減は一時的な現象であり、今回のマイナス成長を過度に悲観すべきではないだろう。だが内需の柱である個人消費の不振は無視できない」と強調する。

ただ同紙は、そう強く懸念はするものの、円安への対策は説かず、「消費動向を注視するとともに、賃上げの持続へ生産性を向上させる改革を急ぐ必要がある」とする。

今春闘での大幅な賃上げが夏場にかけて実際の給与に反映されるが、「だが円安や政府の物価高対策の縮小が物価をさらに押し上げれば、実質賃金のプラス転換は遅れる。消費の下振れリスクに目配りする必要がある」と同紙も指摘しているのに、である。

利上げに慎重な産経

もちろん、日経が言うように、「中小企業を含めた積極的な賃上げが持続するよう、生産性を高める民間の挑戦を最大限に引き出す取り組み」は重要である。

同紙は「人手不足が成長の制約要因にもなるなか、貴重な人材が成長分野に移りやすくする抜本改革こそが消費拡大への王道である」と説く。正論だが、では当面の対策はどうすべきなのか、それへの言及がないのである。

産経も日経とほぼ同様だ。「急激な円安が輸入物価の上昇を通じて家計や企業活動に及ぼす悪影響には引き続き警戒が必要だ」と強調する一方で、物価高に賃上げが追い付かない状況がなくなるかどうかが消費回復のカギを握るとして、「重要なのは、企業の前向きな経営で民需主導の力強い景気回復を実現することだ」と説く。企業に対し設備投資や人への投資をもっと積極化せよとの注文である。

尤もだが、物価高を止める急激な円安への対処の方はどうなのだろうか。

産経は円高へと反転させ得るとして取り沙汰される日銀の利上げ時期について、「経済に弱さがみられる現段階で利上げを急げば景気を冷やす恐れもある」として日銀に慎重な判断を求めた。

一理あるが、実際にいきなり大幅利上げとはならないであろうから、景気を冷やすほどの懸念には及ばないと思われるが、どうだろうか。

毎日からも肩透かし

これら2紙と違い、毎日は見出しの通り、円安の弊害を強調。「長引く物価高が国民生活を圧迫している状況が鮮明となった」「物価高を加速させているのは、歴史的な円安である」とする。

そんな毎日が説くのは、政府・日銀が実施したと言われる市場介入や、与党が求める追加減税には「いずれもその場しのぎにしかならない」として、「賃上げを拡充して、消費の底上げを図ること」、具体的には最低賃金引き上げの加速や人への投資の強化など。大上段に「円安の弊害」を訴えながら当面の対策はなしと、肩透かしを食らった感じである。

本紙は「円安を止めよ」と当面の対策にポイントを絞った。「その場しのぎ」かもしれないが、今必要なのは当局の断固とした姿勢と行動ではないのか。

(床井明男)

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