台湾新総統就任で「中台の対話」求めるメルヘン社説の朝日、毎日

20日、台北で行われた就任式で演説する台湾の頼清徳新総統(2024年5月20日 村松澄恵撮影)
20日、台北で行われた就任式で演説する台湾の頼清徳新総統(2024年5月20日 村松澄恵撮影)

日経はビジネス優先

1月の台湾総統選で勝利した民進党の頼清徳氏が20日、新総統に就任した。民進党にとって初の3期連続の政権をスタートさせる節目の日となった。各紙が社説を出したが、多くは緊張が増す中台関係を対話で治めよといった浮世離れした「メルヘン社説」だった。

朝日は21日付社説「台湾頼政権発足 中台対話の再開めざせ」で「台湾と中国の間で絶えない緊張は、アジアのみならず世界の平和と繁栄に大きな影響を及ぼしかねない問題だ」とし、「台湾の新政権発足を機に、8年間途絶えたままの当局者間の対話再開に向け、双方が歩み寄ってほしい」と書いた。

毎日も21日付社説「頼清徳総統が就任 緊張緩和へ中台は対話を」で、「米中対立が長期化する中、台湾情勢の行方は東アジアの安定を左右する」とし「中台は対話を通じ、緊張緩和に努めるべきだ」とした。

また東京も17日付社説「頼政権と中国 火種としない知恵絞れ」で、「中台双方に何よりも求めたいのは、2016年の蔡政権の発足時から中国が拒否している政治レベルの対話再開への努力である」と書いた。

さらに日経は21日付社説「頼清徳台湾総統の中台現状維持は重要だ」で、頼総統就任演説の中の「台湾の人々が歴史的に勝ち取った民主主義と自由は譲ることができないという主張には、大きな意味がある」としながらも、「中台双方は今後、対話と交流に向けて具体的な方策を探ってほしい」と本音をこぼす。

「中台間で対話が動き出せば、緊張緩和によってビジネス上の交流も促進される。それは地域経済にも好影響を及ぼす」と、いかにもビジネス優先の日経らしい社説だが、経済と安全保障の天秤のかけ方が間違っている。経済優先の安全保障ではなく、安全保障があっての経済であり、安全保障は経済に勝るものだからだ。

骨太の社論張る産経

そうした中、産経の21日付主張「頼総統の就任 抑止力強化で台湾を守れ」は、「頼氏は就任演説で、『民主と自由は台湾が譲歩できず堅持すべきものだ』との原則を表明し、中国の圧力に対して民主主義陣営と連携して防衛力を強化する姿勢を示した」点を評価し、「日本は頼政権を後押しし、台湾海峡の平和と安定を保っていくべきだ」と総括した。

そのために「岸田文雄政権は防衛力の抜本的強化を進め、日台、日米台の安保対話に乗り出すべきだ」と日本の防衛力強化と日台および日米台の安全保障連携に向けた対話を促した。

朝毎に東京、日経は、中台の対話を促すだけの安易な社論だったが、産経だけはこれから高くなるであろう台湾海峡の波を見据え、抑止力強化のための日台、日米台の安保対話の実現を促すリアリズムに徹した骨太の社論を張った。

中国は現在、海警船など公船を台湾の離島・金門島周辺の「禁止水域」や「制限水域」で日常的に無許可航行させ領海侵犯を繰り返しているし、台湾海峡でも人民解放軍軍機が事実上の停戦ラインとされる中間線を越えたり防空識別圏(ADIZ)に侵入している。また侵攻作戦を想定した軍事演習を何度も実施し、台湾周辺への軍事行動を常態化させ威圧を強めている。

譲歩を迫られるだけ

背中に彫り物が入ったならず者が肩を怒らせてこれ見よがしに練り歩くような、こうした輩(やから)に対処するにはただ話し合いで解決しようとしてもどだい、無理がある。

相手が核心的利益を得るための一歩としてやっている確信犯である以上、話し合ってもこちらの譲歩を迫られるだけだ。そして一歩下がれば、二歩三歩と後退を迫られるのだ。

だから意味のある話し合いに持ち込むためにも、武力行使に持ち込んでも無駄だと分からせる必要がある。頼新総統が中国の威圧に対し、日米欧など民主主義陣営と連携した防衛力強化姿勢を示したのもそのためだ。(池永達夫)

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