人口減少と自治体消滅の危機を訴え脱却例を紹介したエコノミスト

小国に転落の可能性

今年4月下旬に人口戦略会議が発表した「地方自治体『持続可能性』分析レポート」によれば、2100年まで全国の自治体の4割に当たる744自治体が消滅するというショッキングなデータが公表された。地方の自治体の多くは、これまでさまざまな調査機関で発表される人口減少の数値によって、「“わが町”が近い将来なくなるかもしれない」という危惧を募らせていたが、今回のリポートがさらに追い打ちをかけた格好である。

そうした中で、週刊エコノミスト(5月14・21日合併号)が地方の人口減少に焦点を当てて特集を組んでいる。見出しは「ストップ!人口半減」。人口減少が進む日本の将来に対して危機感を示すが、その一方で人口減少に歯止めをかけるにはどうすべきか、さらには対策を講じ成果を上げている自治体を紹介している。

エコノミストはまず、人口戦略会議(議長・三村明夫日本製鉄名誉会長)が発表した地方自治体の「消滅可能性都市」を取り上げた。それによると、今後30年間で自治体の20歳から39歳までの女性(若年女性)人口が50%減少すれば、自治体そのものが消滅する可能性が極めて高くなると予測。その手法で計算すれば、2100年までに秋田県は90%以上の自治体が消滅する。青森、山形、岩手など東北・北海道地方でも60%以上の割合で消滅可能性自治体が出るという。

こうした自治体消滅、人口減少について三村議長は、「国立社会保障・人口問題研究所は昨年4月に2100年に日本の人口が6300万人、高齢化率が40%という予測を立てた。…日本は今、世界4位の経済大国だが、(今後100年の間で)存在感のない小国に落ちてしまうかもしれない」と危惧し、さらに「高齢化率40%ということは1人の労働者が1人の高齢者を支える「肩車社会になる」。計算上はそうなるが、そんなことはできるわけがない。社会保障制度自体が潰れてしまう」(同)と警鐘を鳴らす。

UnsplashMarisa Howenstineが撮影した写真

人口増えた自治体も

そもそも人口戦略会議とは、23年7月に設立された組織。11年5月に発足した日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)が日本のエネルギーや人口問題などへの政策提言を行っていた。その一つに、14年5月に発表した「ストップ少子化・地方元気戦略」の中で地方自治体の「消滅可能性都市」のリストを挙げていた。その後、日本創成会議は16年に活動を休止してしまったが、その当時のメンバーが有志となって人口戦略会議を組織し、昨年12月に国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の地域別将来人口推計」に基づいて、10年前にリストアップした「消滅可能性都市」を再度分析したという。

もちろん、消滅可能性自治体から脱却・改善された自治体もある。島根県は10年前に比べて12市町村が消滅自治体から脱却した。消滅可能性自治体の多い北海道でさえも10年前の消滅可能性の割合が80%から65%に低下、30自治体が脱却している。

エコノミストは、これらの中で人口増加を続ける神奈川県開成町と山梨県忍野村を取り上げ、人口転出させない取り組みを紹介している。そこに共通しているのは、子育て、教育など住民の声を反映させた安心できる街づくりを地域ぐるみで取り組んでいること。

社会全体で子供養育

人口戦略会議の三村議長は、人口を増やす方策について、「子供を持ちたいと思う夫婦が出産・育児のリスクを減らせるよう子供を社会全体で育てる。その社会全体の中には、家庭はもちろん、地域社会、国、企業も含まれる。この共同養育する考え方をもっと広めるべきだろう」と述べ、さらに「子供を産み、家庭を持つことは替え難い素晴らしさがある。自分の経験でいうと、2歳までの子供の面倒を見ることは、一生分の甲斐がある」とさえ言い切る。

自治体消滅可能性都市といわれても、なかなか肌身で感じることが難しいが、それでも人口減少は確実に進んでいる。自治体からの人口流出、人口減少を防ぐには制度的な枠組みづくりが必須だが、何よりも必要なのは三村議長が述べたように「子供を産み、家庭を持つことの素晴らしさ」をより広く体感してもらうことが必要で、そのための啓蒙(けいもう)もまた重要であろう。

(湯朝 肇)

spot_img
Google Translate »