米国によるウクライナ軍事支援の効果に懐疑的な欧州の軍事専門家

遅過ぎた米国の支援

バイデン米大統領は4月24日、ウクライナ支援法案に署名した。これを受け、米国は約610億㌦規模のウクライ支援に乗り出す。ロイター通信によると、第1弾として、車両、対空ミサイル「スティンガー」、高機動ロケット砲システム向けの追加弾薬、155㍉砲弾、対戦車ミサイル「TOW」および「ジャベリン」など約10億㌦の兵器供給が既に承認されたという。

米国のウクライナ支援にゴー・サインが出たが、欧州のメディアに登場する軍事専門家からは「ウクライナ軍が米国からの軍事支援を受けて勢いを回復し、ロシア軍に反撃できる」といった楽観論は聞かれない。

ドイツの軍事専門家ラルフ・ティーレ氏はドイツ民間ニュース専門局ntvとのインタビューで、「米国の支援はあまりにも遅過ぎた。ウクライナの状況は敗北の瀬戸際にある。欧州の支援がウクライナの戦局に影響を及ぼすことは最初から期待していない」と単刀直入に答えていた。

オーストリアのインスブルック大学の政治学者(ロシア問題専門家)のゲルハルト・マンゴット教授は先月28日、ntvでのインタビューで、「米国から輸送される武器がウクライナに届くまでには時間がかかる。戦局の急速なチェンジは難しく、部分的な成果しか期待できないのではないか」と指摘、「(それ以上に)ウクライナ軍の兵士不足は米国の軍事支援では解決できない問題だ。ウクライナ軍は少なくとも10万人の兵力が新たに必要だ」という。

ポーランドの軍事専門家で独立した戦争分析ポータルRochan-Consultingのディレクター、コンラッド・ムジカ氏は、「現在、ウクライナ軍が極めて危険な状況にある。ウクライナの弾薬庫が完全に空になる前に、米国からの数十億㌦の支援パッケージはウクライナにとって最後の救いで、不均衡を軽減するのに役立つが、それ以上ではない」と、米国の支援パッケージに対して過大の期待を戒めている。

進行を遅らせるだけ

ゼレンスキー大統領によれば、ウクライナの1発に対してロシアの10発の砲弾という状況だ。チェコのウクライナへの砲兵イニシアティブは現在進行中だが、数週間内には多くの砲弾を提供できる見込みはない。ムジカ氏は「戦場では砲撃は最小限に抑えられ、しばしば司令官によって許可を受けなければならない。米国の武器は戦争の進行を変えるのではなく、遅らせるだけだ」と説明する。

ムジカ氏の分析を紹介したロビン・グリュツマッハー記者は30日付のntvのウェブサイト欄で「ウクライナの最も暗い時が今始まった」という見出しで記事を掲載している。

米国は最大射程300㌔の地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」をウクライナに供与したが、ドイツが最大射程距離500㌔の巡航ミサイル「タウルス」をキーウ側に供与すれば、戦局はウクライナ側に有利に傾くという声もあるが、戦争のエスカレートを恐れるドイツのショルツ首相はタウルスの供与については頑なに拒否している。

米国の戦争研究所(ISW)のシンクタンクは、「ウクライナが米国の支援が前線に到着するのを待っている間、ロシアは今後数週間で明らかな戦術的利益を得るだろう」と分析している。

戦略の統一ない欧州

フランスのマクロン大統領は、27日掲載されたメディアグループ「エブラ」とのインタビューの中で、欧州共通の防衛における核兵器の役割(核の抑止論)について議論を呼び掛けたばかりだ。同大統領はこれまで欧州軍の創設、地上軍のウクライナ派遣、欧州独自の軍需産業の育成など多くの提案を表明してきたが、欧州ではウクライナへの軍事支援で統一した戦略的コンセプトがない。

バルト3国、ポーランド、英国、ルーマニアなどの国は、クリミア半島を含み、ロシア軍をウクライナの国境外に追い払うまで戦争を遂行すべきだと主張し、積極的な軍事支援を支持している一方、欧州の盟主ドイツは戦闘のエスカレートを警戒している、といった具合だ。

(小川 敏)

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