「大東亜戦争」巡り小さく報じて大きく騒ぐ朝日とそれを批判する産経

朝日の手法知る産経

「大東亜戦争」を巡って朝日と産経が論争を繰り広げている。朝日はこの呼称を使うなと主張し、産経は使って何が悪いと反論する。戦争の呼称を巡ってこれだけ熱くなるのは、言うまでもなく歴史観に根本的相違があるからだ。

事の発端は、硫黄島で開催された日米合同戦没者追悼式に参加した陸上自衛隊第32普通科連隊(さいたま市)が公式X(旧ツイッター)に「大東亜戦争最大の激戦地硫黄島」と投稿したことだ。これを朝日が8日付社会面に1段見出しで小さく取り上げ、記事末尾に「戦後、占領軍の命令で『大東亜戦争』の呼称は禁止された」と記した。

陸上自衛隊第32普通科連隊のXでの投稿(4月5日)※現在は削除済み
陸上自衛隊第32普通科連隊のXでの投稿(4月5日)※現在は削除済み

が、小さく報じて大きく騒ぐのが歴史問題に対する朝日の手法だ。それを知ってか、防衛省はすかさず、この記述を削除した。すると、朝日は10日付社会面に「防衛相が釈明 研究者ら『世間と常識のずれ』『総括し、議論を』」と騒ぎを大きくした。防衛相の釈明とは9日の閣議後会見で(記事にはないが)、朝日記者が質問し引き出したのだろう。

朝日の手法を知る産経は10日付主張「大東亜戦争 言葉狩りを朝日は恥じよ」で猛然と批判し、「朝日が占領軍の禁止命令への言及で記事を終えているのは悪質である」と断じた。呼称は現在禁じられていないし、政府は太平洋戦争のみを使う決定もしていない。連合国軍総司令部(GHQ)の命令はサンフランシスコ講和条約に伴う日本の主権回復で失効したと指摘した。

事なかれ主義の政府

これに対して朝日は13日付社説「自衛隊の歴史観 戦争の反省風化を懸念」で、再びGHQの禁止命令を持ち出し、さらに自衛官の靖国神社参拝を俎上(そじょう)に載せ、矛先を自衛隊の最高指揮官である岸田文雄首相に向け「歴史の教訓がなおざりにされる現状を放置」すれば、国民の支持が得られないと“恫喝(どうかつ)”した。

一方、産経は17日付に評論家の潮匡人氏(元自衛官・旧防衛庁広報誌編集長)のインタビュー記事を掲載し、「朝日の言葉狩りに屈するのか」と大東亜戦争の表現を削除した防衛省側を批判。潮氏は旧防衛庁の広報誌では「大東亜戦争」を使っていたと証言している。

翌18日付では阿比留瑠比氏(論説委員兼政治部編集委員)がコラム「極言御免」で、日本共産党の志位和夫中央委議長が論戦に便乗し「旧日本軍との連続性を示す危険な逆流だ」と騒ぎ立てていると指摘し、「くだらない批判に節を曲げず、堂々と大東亜戦争と呼ぼう」と政府の事なかれ主義を戒めた。

ところでGHQ指令については産経に「歴史戦」の連載がある。その中で岡部伸・編集委員が「GHQ工作 贖罪意識植え付け 中共の日本捕虜『洗脳』が原点 英公文書館所蔵の秘密文書で判明」と報じている(2015年6月8日付)。

それによれば、GHQでマッカーサーの政治顧問付補佐官だった米国の外交官、ジョン・エマーソンが1944年11月に米軍事視察団の戦時情報局(OWI)要員として中国の延安を訪問。中国共産党(中共)の支配下で野坂参三元議長が日本軍捕虜の思想改造に成功した手法が「対日戦争(政策)に役立つと確信」し、その成果を米国の対日政策に持ち込んだという。

内実は中共式の作戦

エマーソンは後に「(延安での収穫を元に)日本に降伏を勧告する宣伝と戦後に対する心理作戦を考えた」(大森実『戦後秘史4赤旗とGHQ』)と告白している。その心理戦は、「軍国主義者と人民(国民)を区別」し、前者を徹底的に叩き人民をGHQに従わせるプロパガンダ(宣伝)だ。それに基づきGHQは終戦直後の45年9月に「プレスコード」(新聞綱領)を定めて言論を統制、指令を次々に出した。

要するにGHQとは名ばかりで、内実は中共指令である。なるほど、それで朝日と共産党が血眼になってGHQ指令を持ち出すわけか。産経にはこの点も再度、取り上げてもらいたい。

(増 記代司)

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