
情報漏洩で行政指導
モバイルメッセンジャーアプリのLINEは今や生活に欠かせない社会インフラである。家族や友人同士の連絡からPTA、町内会など地域グループの連絡網として利用されており、最近では企業や自治体までが公式に使い出し、わが国で9600万人が使っている。ところがそのデータセンターが海外にあったり、そこと日本でシステム接続の認識基盤を共有していたり、さらに悪いことには情報が漏れていたとしたらどうか。
総務省はLINEを運営するLINEヤフー(LY)に対し3月5日、行政指導を行った。2021年3月に続き2度目である。内容は情報管理についてだが、なぜ繰り返されたのか。
週刊文春がこの問題を取り上げた。4月11日号から同25日号まで3週にわたってLINEヤフー「巨弾キャンペーン」を続けている。「巨弾」というから“文春砲”の中でも超特大級の弾を撃ち込むということだろう。意気込みがすごい。
4月11日号の記事「LINEヤフーの暗部」では2度目の行政指導を受けたことでLYとはいったいどういう会社なのかを掘り下げている。そもそもLINEは日本の会社なのか。始まりは韓国IT企業大手のNAVERである。そして「複雑な経緯を辿って」現在は「NAVERと日本の携帯事業会社ソフトバンクが折半して出資する中間持株会社がLINEヤフー株を約六四%保有」しているという。
情報漏洩(ろうえい)が起こったのは業務委託を受けていたNAVER100%子会社のさらに「再委託先企業の従業員のパソコン」からだった。21年に行政指導を受けたのはデータセンターを韓国に置き、中国の委託先からもアクセスできるようになっていた点だったが、この懸念が現実化したのだ。
「事実上“嘘”」問題視
LINEは総務省の指摘した点を是正したはずだったが、「システムに接続する際の認証基盤を共通化していた」から、何のことはない、データセンターをどこに置こうが、韓国からも中国からもアクセスできるままだったのである。それで「LINE利用者にも被害が拡大した」のだった。
同誌はこの「事実上“嘘”」を問題にしている。総務省が懸念するのもこの韓国のセキュリティー意識の低さだ。移したと言いながらアクセスできる。韓国は「ケンチャナヨ(大丈夫、気にしない)文化」だと言われ、日本側から見れば、これが「経済安全保障上のリスク」ということになる。総務省はLYに対して「<経営体制の見直し>にも踏み込んだ」指導をしているが、これはつまり資本関係の切り離しをせよと促すものだ。
では韓国と切り離すことができるのか。サービスを開発しているNAVER子会社の「LINEプラスを切り離すと、そもそもLINEというサービス自体が成り立たなくなってしまう」という。つまり「NAVER依存からの脱却」は難しいということだ。
孫正義社長を“直撃”
それではソフトバンクグループ(SBG)を率いる孫正義氏はどう考えているのだろう。同誌は25日付で第3弾として「ソフトバンク社長・宮川潤一が明かす“孫正義の本音、韓国の抵抗”」で孫社長を“直撃”した。
結論から言うとLY側は手をこまねいているわけではない。総務省の指導を「真摯に受け止め」、焦点の「資本関係の見直し」について宮川氏は「NAVERから株を買い取り、場合によってはLYを非上場化するという大ナタを振るう可能性を示唆」している。孫氏は「一日も早く技術的にも国内で完結させることができるよう強く願っている」と書面で同誌に答えたが「現時点で何も決まった事柄はありません」(SB)と言う。
「巨弾」は花火に終わっているような気もするが、韓国語ができ、韓国事情に明るいライターを使うなりして、NAVER側に斬り込めば、「絶対切り離しはない」のような全く別の話が出てきたかもしれない。「総力取材」ならそれくらいはしてほしいところだ。
第2弾(同18日付)「ヤフーニュースの正体」では、このままでは新聞、雑誌など金をかけて正確綿密な記事を提供するメディアが崩れていくことへの警鐘で、これはこれで考えさせられる。続報に期待する。(岩崎 哲)