国民・玉木氏が追及
ネットは今、内閣府の再生可能エネルギー(再エネ)・タスクフォース(TF)資料問題で沸き立っている。構成員だった自然エネルギー財団事業局長の大林ミカ氏が会議に提出した資料に、中国の国営電力会社のロゴマークの透かしが入っていたことが分かり、財団や同氏が中国と関係が深いのでは、との疑惑が浮上。同氏は辞任に追い込まれた。
大林氏は記者会見で、資料は単なる「不注意」、他国の影響で国のエネルギー政策をゆがめたことは「一切ない」と釈明した。しかし、ユーチューブやX(旧ツイッター)上では、中国による「サイレント・インベージョン(静かなる侵略)」が政府の政策に及び、国家の安全保障が脅かされている、との警戒論が渦巻く。
追及ポイントは、財団と中国との関係、そして自民党内で「脱原発派」として知られる河野太郎規制改革担当相の責任。追及の筆頭は、国民民主党代表の玉木雄一郎氏。自身のユーチューブ番組「たまきチャンネル」で「深刻な問題だ」として連日取り上げている。
2011年に設立された財団について、玉木氏は「設立当初からエネルギー版『一帯一路』構想であるアジアスーパーグリッド(ASG)構想を推進している」として、中国との関係の深さを示唆する。しかも、大臣の私的諮問機関である再エネ・TFに同財団から2人も入っている。構成員は4人のみだった。
防衛相時代にも懸念
「(AGS構想の)電力の相互依存という言葉はいいが、ある国に一方的に依存することになると、首根っこ押さえられることと同じ」だから、再エネ問題は安全保障上の問題だと訴える。
財団の主張は反原発・反化石燃料で、不安定な自然エネルギー、とりわけ太陽光の推進だ。「うがった見方をすると、日本の電力は不安定になる。足りなくなったら、中国やロシアから電力を輸入すればいいという構想。他国にエネルギーを依存することは安全保障上きわめて脆弱だ」という指摘には説得力がある。
懸念はそれだけでない。防衛相時代、河野氏は陸海空の防衛施設に提供される電源の再エネ化推進を打ち出した。しかし、電力の使用量で(自衛隊の)活動内容は一定程度分析できる。しっかりした国内企業ならいいが、外国と関係の深い民間企業に電力供給させることは危険極まりない。
2日付の本欄で論者の増氏は、TF資料問題で新聞の動きが鈍いと指摘した。その理由として、産経新聞以外は「再エネ企業の広告漬けでモノが言えないとの説もある」と述べた。産経は1日付の「主張」で「中国の影響力工作を疑え」との「主張」を掲げたが、広告漬けにされた新聞は、中国共産党による静かなる侵略に籠絡されているというわけだ。
理由に「左系多い」も
一方ユーチューブで、マスコミの動きが鈍いことについて別の理由を述べる識者がいる。元大蔵・財務官僚で経済学者の高橋洋一氏だ。自身の番組で「マスコミは左系が多いから、脱原発や再エネが心地よい。そういう人は(TF資料問題に)触れない」というのである。
さらに高橋氏は「真面目に考えると、エネルギー政策でも安全保障でも原発、再エネなど選択肢は多いほうがいい。しかも他国に依存しないで、自給率が高いほうがいい」に決まっているとしながら、「私はあまり触れたくない分野。ここにいる人たちは(反原発の)活動家だから議論してもどうなるというものじゃない」とあきらめ顔。そう言えば、河野氏は3年前、再エネの比率を巡り、資源エネルギー庁の官僚に「日本語分かる奴、出せよ!」と、まるで左翼活動家のような言葉を発してひんしゅくを買ったことは記憶に新しい。
学者の高橋氏はあきらめても政治家の玉木氏はそうはいかない。「立憲民主党は大林氏を呼んで幹部が対談している。原発をゼロにして再エネを100%にすると言っているようだが、そういう政策にも自然エネルギー財団の考えや思想が反映されているのではないか」と疑念の目を向ける。政府だけなく野党も外国の影響を受けていないか「引き続き、全体像を調査・検証する」と、頼もしさを見せている。
(森田清策)