トップオピニオンメディアウォッチ日教組教員の「汚染水」授業に一石を投じた産経とお門違いの朝日

日教組教員の「汚染水」授業に一石を投じた産経とお門違いの朝日

処理水の海洋放出が開始された東京電力福島第1原子力発電所=8月24日午後、福島県(時事通信チャーター機より)
処理水の海洋放出が開始された東京電力福島第1原子力発電所=8月24日午後、福島県(時事通信チャーター機より)

福島で意見書を採択

福島県議会で先週、東京電力福島第1原発の処理水を巡って、一つの意見書が採択された。題して「教育現場におけるALPS処理水の理解醸成に向けた取組の更なる強化を求める意見書」。全県議58人のうち賛成51人の圧倒的多数で可決され、政府に送付された。

意見書採択のきっかけをつくったのは産経だった。今年1月28日付に日教組が札幌で開催した教育研究全国集会(教研集会)で神奈川県の中学教員が処理水を「汚染水」と記した教材を使った授業実践例を報告していると報じ、30日付主張では「『汚染水』授業 日教組は偏向指導やめよ」、同1面コラム産経抄では「福島の人と自然を冒涜する『卑劣』で『愚劣』な授業をいつまで続けるのか」と批判した。

それはそうだろう。海洋放出は汚染水でなく処理水だからだ。汚染水は原発事故で生じた高濃度の放射性物資を含むが、処理水はこれを多核種除去設備(ALPS)で放射性物資を取り除き安全とされる国際基準を満たしたものを言い、国際原子力機関(IAEA)も安全性にお墨付きを与えている(今年1月、海洋放出の調査報告で)。

それを汚染水とするのは重大な誤謬(ごびゅう)で、あらぬ風評被害を呼び起こしかねない。原発事故から13年。その間、営々として信頼を積み重ねてきた福島県にとっては迷惑千万な話だ。それで自民党が意見書を取りまとめた。

同書は日教組教員の「汚染水授業」について「『核汚染水』と称して虚偽の情報を世界中へ発信している中国と同様である」と断じ、「科学的な根拠に基づいた適切な教育が行われるべき」として全国の教育委員会に対し「処理水について分かりやすい適切な資料等の活用について、強く求めていくこと」を政府に要望した。

朝日が猛反発後押し

これには県議会各会派のうち自民党のほか、県民連合、公明、日本維新の会・無所属の会が賛成。19日の本会議で反対したのは日本共産党議員ら5人のみ。県民連合に所属する立憲民主党議員(10人)のうち左翼労組を基盤とする2人が採択時に退席した。

意見書には県高教組や反原発派が猛反発。それを後押しするかのように熱を入れて報じたのが朝日福島版だ。16日付トップでは「自民の意見書に波紋 教育現場での『汚染水』呼称を問題視 議会に提出『科学的根拠を』」との見出しで「識者は『教育への政治介入』との認識を示し、現場からも『萎縮を招く』との声が上がる」と書き立てた。識者とは龍谷大学教授の丹羽徹氏で、共産党機関紙「しんぶん赤旗」にも登場する憲法学者だ。

朝日はこういう学者と一部の左翼労組の声をもって処理水を汚染水に貶(おとし)めようというのだろうか。だが、福島版13日付から「東日本大震災13年 『原発』を教える」(24日付まで6回)と題して掲載された県内の中高校教員らの「現場」の声はいささかニュアンスを異にした。

注意を払う現場教員

その中には高教組や県教組に関わった教員らも登場するが、海洋放出を巡って「汚染水」とする授業の話はまったく出てこない。「委縮」の声も一切、聞かれない。中学校で理科を教える女性教諭は「国が確定した科学的根拠に基づき説明する」ことと「『危険』一辺倒ではなく、放射線は使い方しだいで生活に役立つ面もあると伝える」ことを心掛けたと語っている(21日付)。健康被害への懸念の声もあるが、いずれの教師も「汚染水」といった風評を呼び起こす表現には注意を払っている。それが「福島の総意」と言っても間違いあるまい。

とまれ産経が一石を投じた日教組教員の「汚染水授業」が福島県議会を動かし政府に「処理水」の科学的教育の徹底を促せた。日教組にとっては、とんだ「やぶ蛇」だった。朝日の「教育への政治介入」論も、そのお門違いぶりが浮き彫りにされたと言えそうだ。

(増 記代司)

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