米の無人機基地廃止
アフリカ・サハラ砂漠南部一帯のサヘル地域で、反欧米の動きが強まる一方で、ロシアの勢力拡大が進んでいる。2018年ごろからアフリカ北部に進出していた民間軍事会社「ワグネル」に代わり、ロシア政府により近い民兵・傭兵(ようへい)組織「アフリカ軍団」が取って代わろうとしている。
米ブルームバーグ通信は19日、ニジェールでロシア接近の動きが強まっていると伝えた。
ニジェール政府は今月、サヘル地域のイスラム過激組織との戦いのために設置していた米軍の無人機基地の廃止を正式に決めた。治安維持のために駐留していた仏軍は昨年、すでに撤収しており、ブルームバーグは「ニジェールは長年にわたる同盟国から離れる最後の措置を取り、ロシアの腕の中へと進んでいる」と警鐘を鳴らした。
これで、サヘル地域でのイスラム過激派への監視、攻撃の拠点は失われることになり、過激派組織「イスラム国」(IS)などの活動が活発化するのは必至だ。
無人機基地廃止の決定は、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが、ウラン鉱山を巡ってイランとの合意を秘密裏に模索しており、米政府高官がこれを非難したと報じた直後のことだ。
ドイツのコンラート・アデナウアー財団「サヘル計画」のウルフ・レシング所長は、「ニジェールの米国との協力の終結で、西側が、新たな軍政からこれらの国々を救うためのすべての希望が失われる」と指摘、「すでに探りを入れているアフリカ軍団に入館証を出すのと同じだ。ロシアは昨年12月に、軍事協定を交わしている」とロシアとの関係強化へ警戒を呼び掛けている。
混乱に乗じる露傭兵
すでにニジェールの隣国、マリ、ブルキナファソでは軍政が敷かれ、ロシアへの接近を強めている。ブルームバーグによると、ワグネルは新たに組織されたアフリカ軍団にのみ込まれ、マリでは既に活動し、ブルキナファソにも展開しようとしている。
オーストラリアの経済平和研究所の「世界テロ指数」によると、昨年の世界のテロによる死者の47%はサヘル地域だという。「国連軍が撤退したブルキナファソとマリがそのうちの多くを占める」とブルームバーグは指摘している。
米紙ワシントン・ポストはニジェールでのクーデターの翌月の昨年8月、サヘル地域の動向について、「ガボンを軍が支配したことで、サブサハラ・アフリカ全体で20年以降に発生した軍事クーデターは九つに達した」と指摘した。民政への復帰へ国際的な制裁が科せられているが、「成功していない」という。
ポストは、ニジェールのクーデターで「大西洋から紅海までの軍政国家の帯ができた」と強調、「そのうちのほとんどが西側よりもロシアへの接近を強めている」としている。
「経済的困難、弱い統治がクーデターの原因」(ポスト紙)とみられ、そうして生じた混乱にロシアが傭兵を使って入り込んでいるというのが実情だ。
強いナチスへの郷愁
仏紙ルモンドは昨年12月、アフリカ軍団について、「ワグネルの名前は消えたが、ナチス・ドイツの名残はそのままだ」と皮肉っている。
ワグネルの名前が、ドイツ人作曲家ワーグナーに由来することはよく知られているが、同紙はロシアのアフリカ軍団について「第2次世界大戦中に北アフリカで戦ったドイツ軍部隊から取ったものだ」と指摘した。「ネオナチ」殲滅(せんめつ)をウクライナ侵攻の理由の一つに挙げているロシアだが、ナチスへの郷愁はかなり強いようだ。
プリゴジン氏の下で自由に活動していたワグネルの傭兵らの一部は、アフリカ軍団に編入されているとみられ、今後はロシア政府の影響が強まる。アフリカの天然資源の確保にはうってつけだ。
ISは今年に入って、イランでテロを実行、ロシアの首都モスクワでも銃撃事件を起こし、150人超が死亡、復活の兆しだ。(本田隆文)





