習近平政権の歴史的特質を指摘し「紅」路線回帰に警鐘鳴らした産経

11日、北京の人民大会堂で閉幕した全国人民代表大会(全人代)で、拍手する習近平国家主席(中央)ら(AFP時事)
11日、北京の人民大会堂で閉幕した全国人民代表大会(全人代)で、拍手する習近平国家主席(中央)ら(AFP時事)

スポット的な各社説

中国の全国人民代表大会(全人代)が閉幕した。各紙は社説で論陣を張ったが、共通テーマは閉幕後の首相記者会見が取りやめになったことや改正反スパイ法など外国人を含めた監視体制強化問題だった。

朝日は6日付社説「中国全人代 経済への懸念拭えるか」で「(中国経済の)懸念材料は外資の動きだ」とし「外国人を敵視するかのような反スパイ法強化を図るのは論外だ」とした。毎日も6日付社説「『習1強』体制の全人代 透明性の後退を危惧する」で、「反スパイ法改正に象徴される国家安全優先の方針は、外資の投資意欲を減退させ、23年の対中直接投資は前年比82%減となった」と指摘した上で「統制強化は一党支配の維持には有効でも、経済の活力をそぎかねない。国際社会の信頼を損ねるリスクもある。習指導部は内向きになるのではなく、協調の道を探るべきだ」と主張した。

こうした類いの見方は、スポット的な現実問題に対するものではあるが、歴史的視点が欠落している。その点では、社説で習近平第3期政権の歴史的特質を的確に指摘した産経が光った。

産経15日付主張「中国全人代閉幕 毛沢東時代の再来危ぶむ」で、「習指導部は、党があらゆる面での統制を強める国家安全を経済よりも優先する姿勢を鮮明にした」「政府に対する党の指導が明確化された。毛沢東による大躍進政策などの失敗を繰り返さないため鄧小平が打ち出した『党政分離』を否定したことになる」と書き、「国際社会は、習氏が強引に推し進める新たな毛沢東時代の到来に備える必要がある」と中国の急進的な左旋回に警鐘を鳴らした。

紅専史観で見る60年

中国共産党史をざっくり見る上で参考になるのが、「紅専」史観だ。1949年に建国された共産党政権による中華人民共和国は、毛沢東が主導した大躍進時代や文化大革命の混乱と疲弊の時代の30年を経て、鄧小平による「改革・開放」時代の30年を迎えた。

つまり、中国の現代史は共産主義化を急速に進めようとした毛沢東の「紅」路線と、現実に即して経済の効率を高めようとした鄧小平の「専」路線と総括できる。産経はその建国約60年後に登場した習近平総書記の時代を、「専」路線と決別し毛沢東の「紅」路線へ回帰するものとして危惧を述べている。

鄧路線の「専」時代には、目に見える経済発展で人々の生活の質の向上が鮮明だった。人々は生活実感を伴った豊かさから共産党政権を支持した。習近平政権は、失業者増大を伴う経済的困難と共産党政権に対する求心力低下を払しょくするため、引き締めと弾圧の強化に動き出している。行きつく先は、秘密警察が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する抑圧と恐怖による統治だ。そして、求心力強化のために台湾併合というカードをいずれ切ってくる可能性がある。そうした中国の左旋回に、西側世界は備える必要がある。

武力による覇権狙う

ではどう備えるべきなのか。具体的危機を指摘したのは読売だった。

6日付読売社説「中国全人代開幕 経済より軍事で無理はないか」で、経済低迷を余儀なくされる中でも「軍事予算には、前年比7・2%増の約34兆8000億円が計上された。日本の来年度防衛予算案の4・4倍もの規模になる」とし「米国と同等の軍事力を確保することで、目標とする台湾統一や、南シナ海での海洋権益の拡大に向けて、米軍の介入を拒否する狙いは明白だ」と切り込む。

その上で「野放図な軍拡によって力による現状変更を図る習政権の姿勢は到底、容認できない」と総括する。

毛沢東の革命思想の核心は「政権は銃口から生まれる」にある。第二の毛沢東になろうとしている習氏が狙うのは、武力および武威を用いた覇権にある。西側世界が備えるべきは、中華帝国主義の膨張路線だ。(池永達夫)

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