トップオピニオンメディアウォッチ残業規制でトラックドライバー不足深刻化、物流の危機訴える東洋経済

残業規制でトラックドライバー不足深刻化、物流の危機訴える東洋経済

パーキングエリアに駐車しているトラック(photoAC)
パーキングエリアに駐車しているトラック(photoAC)

評判悪い「24年問題」

バスやタクシー、トラックのドライバーの働き方を改革するとした「2024年問題」が4月1日からスタートする。これまで時間外労働いわゆる残業への規制などがなかったドライバー業界に対し新たに年960時間の時間外労働の上限規制を定め、ドライバーの休息時間も増加させた。

もっとも、この「2024年問題」に対する現場の評判はすこぶる悪い。「スーパーに商品が入らない」「バスが町からなくなる」といったことが近い将来やってくるという声もある。果たして、スムーズに事が進んでいくのであろうか。

こうした現場の声、国民の懸念に週刊東洋経済(3月2日号)が切り込んだ。「物も人も動かない ドライバーが消える日」と題して、現場の声をじかに聞いて特集を組んだ。

現在、国内にはトラックに約83万人、タクシーに約23万人、バスに約13万人のドライバーが存在する。それでなくとも人材不足が叫ばれる業界。東洋経済はまず、「2024年問題」に対する現役の中高年トラックドライバーの声を挙げる。

「2024年問題はこのままではいい方向に行かない。ドライバーは規制に反対の人が多い。走ってなんぼの世界で労働時間も賃金も減るのでダブルワークをすることになる。別法人をつくり準備している会社もある。規制を守ったほうが損をする形ではダメだろう」(ドライバー歴35年、50代後半の男性)といった意見や「残業規制はいいことと思うけど、ドライバーとして稼げなくなるので反対。荷主側の体制や下請けの制限のほか、運賃の下限も決めて給料を保証しないと、誰もこの仕事をやりたいと思わない」(ドライバー歴32年、50代前半の男性)というように規制導入に否定的だ。

中継輸送という策も

もちろん、業界として対策を講じていないわけではない。その一つが中間地で荷物を交換する中継輸送。例えば、大阪から来たトラックと東京から来たトラックが中間地点である浜松サービスエリアで荷物を積んだトレーラーを交換して再び来た所に戻るというシステムだ。従来なら東京―大阪間を往復する距離を半分に短縮し、休息も十分に取れるというメリットがある。

もっとも、このシステムを現在実施している業者の割合は16%ほどで、始まったばかりの状況。その普及の鍵は「道路管理者と運送会社、さらには競合同士など、さまざまな会社の垣根を越えた協力関係にある」(同誌)という。

一方、タクシー業界においても人材不足という点では同じ課題を抱える。さらに悩ませているのは「ライドシェア」問題。コロナ終息によるタクシーの利用増で、タクシーの供給が追い付かないことから政府が打ち出した方針。2種免許を持たない1種の一般ドライバーでも自家用車を使って客を運送するいわゆる“白タク”が限定的であるが解禁されていく。

政府は一般ドライバーがライドシェアする場合はタクシー会社の管理運行の下で動き、タクシーが不足する地域や時間帯に限るとされるが、タクシー業界は複雑な思いを持つ。

より深刻なバス業界

ところで、バス業界はより深刻な様相を呈している。「従来、バスの減便や廃止といえば、利用減による赤字が主な理由だった。…『2024年問題』は苦境を表面化させた。ドライバー不足による減便・廃止は地方だけでなく全国的な問題になりつつある」(同誌)と分析。日本バス協会によれば、路線バス会社の9割は赤字(22年)、現行の路線を維持するには30年には3万人のドライバーが不足するという。

路線の減便・廃止は地域社会に大きな影響を与える。「地方の消滅は交通の消滅から始まる」との指摘がある。以前から鉄道の路線廃止は議論されてきたが、人や物流を担うドライバーの不足について、より意識を向けることが重要だ。

(湯朝 肇)

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