トップオピニオンメディアウォッチ“性差否定”のNHKで「女は年取ると不機嫌になる」と言った武田鉄矢

“性差否定”のNHKで「女は年取ると不機嫌になる」と言った武田鉄矢

子育てをする夫婦のイメージ(Image by PublicDomainPictures from Pixabay)
子育てをする夫婦のイメージ(Image by PublicDomainPictures from Pixabay)

「夫」「妻」と呼ばない

15年前のこの欄で、当時のNHK教育テレビで、ある音楽家(男性)が女性を「女優」と呼んで「俳優」と言わないことに異議を唱えたことを取り上げたことがある。その時、女優(あえてこの言葉を使う)の檀ふみは「私、女優という言葉は好きですよ。女優でいいじゃないですか」と、やんわり切り返した。

いつからかははっきり確認できないが、NHKは近年、女性も「俳優」と呼んでいる。かつては、女性差別を意識して「俳優を使うべし」となったのだろうが、今は、NHKがLGBT(性的少数者)運動を積極的に推進する手前、男女の性差を肯定するような言葉遣いは減らしているのだろう。配偶者を「夫」「妻」ではなく「パートナー」と呼ぶのもその一例だ。

また、大晦日(おおみそか)の紅白歌合戦にも、性的少数者に対する人権侵害を助長するとの指摘も出ているから、そう遠くない日、番組名を変えるか、番組打ち切りとなるかもしれない。ところが3月8日午前、独り暮らしの筆者が家事をしながらNHKラジオ第1を聞いていたら、次のような言葉が耳に入ってきて、オッと思った。

「『男女そろわないと、子育てって難しいですよ』と、伊保子先生はざくっと人間をまとめるんですよ」「生殖や子育てが終わっても『人間は一対である』。そういうのを生物学の立場で言ってもらうと、すごい安堵(あんど)する」

声の主は、歌手で俳優の武田鉄矢。「伊保子先生」とは、ラジオ番組「ふんわり」の金曜MCで、人工知能研究者の黒川伊保子。番組にゲスト出演していた武田は、黒川の本を大方読んでいるらしく、その考え方に詳しい。

真逆の態勢をとる脳

黒川の著書「夫婦のトリセツ 決定版」にこんなことが書いてある。「男女は、生殖をミッションとしたペアなので、大切な命を守り抜くためには、ほんの少しの隙も許されない。だから、あらかじめ男女の脳は『とっさに真逆の態勢を取って、互いに守り合う』ように仕組まれているのに違いない」。もうバリバリの“性差肯定派”なのだ。

生涯独身を通す男女が増えただけでなく、子供のいない夫婦も少なくない。だから、合計特殊出生率が1・26(2022年)と、人口維持に必要な2・07を大きく下回る。年間出生数も昨年は76万人を下回り8年連続で過去最低を更新した。日本の人口減少はメディアや教育界に蔓延(まんえん)する性差否定思想と無関係とは言えまい。

それはさておきこのご時世、「男女は、生殖をミッションとしたペア」なんて言えば、フェミニストやLGBT活動家から激しく突っ込まれるのがオチ。もちろん「夫婦のトリセツ」を読むのは、既婚者か結婚希望者だろうから抗議活動の恐れは少ないだろう。それでも黒川は気を遣い、著書では「私は『夫婦は子どもを持つべき』だなんて微塵も思っていない」と断っている。

だがラジオでの発言となると、「シングルマザーでも立派に子育てしている」「同性カップルもいる。“生殖をミッションにする”という発言は、差別を助長する」との抗議が予想され、並の出演者だったら「生殖がミッション」などとは公言しないだろう。

そこは、もうすぐ後期高齢者になる団塊の世代の武田。かつて、テレビで「選択的夫婦別姓制度」の是非論議で、「(姓を変える)煩わしさが結婚の関係」と発言するなど、数々の“炎上”を経験してきただけに、少々の批判は意に介さない。発想が似ている黒川とのトークは弾み、終(しま)いには「女性は年を取ると不機嫌になる」と、フェミニストが聞いたらNHKに大挙して押し掛けてきそうな発言まで飛び出した。

「命を守る能力高い」

だが、黒川の解説が絶妙だった。「子供を生み育てるミッションを持つ性はとにかく気付きを重ねなければならない」。したがって「女性が、気が立つというのは幼い命を守り抜く能力が高い」ことを意味するのであって、気付きの能力が高い女性は、気付きの量が少ない男性に腹が立つのだ、という。

なるほど、これを聞くと「年を取ると不機嫌になる」との武田の言葉は、女性への褒め言葉に聞こえてくる。性差を否定したがるフェミニストやLGBT活動家に対抗するなら、脳科学や生物学を勉強するのがいいようだ。

(敬称略)

(森田清策)

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