なぜ30年以上もデータ捏造が続いたか、分からずじまいの「文春」

「東京オートサロン2020」でトヨタGRヤリスに乗り笑顔のトヨタ自動車の豊田章男社長(当時) =10日午前、千葉県の幕張メッセ
「東京オートサロン2020」でトヨタGRヤリスに乗り笑顔のトヨタ自動車の豊田章男社長(当時) =10日午前、千葉県の幕張メッセ

振り回された子会社

昨年下旬発覚したトヨタ自動車グループの不祥事で、ダイハツなどは型式指定取り消しという重い行政処分を受けた。違反の一例だが、前面衝突試験で、本来、センサーにより衝突を検知して作動するエアバッグ装置をタイマーで作動させるように細工し、申請に関わる自動車と異なる構造で検査を実施するなど、悪質だ。

週刊文春2月29日号「豊田章男トヨタ会長はなぜ不正を招いたのか」で、トヨタ自動車の佐々木眞一元副社長は「かつて仕えた身として、不正をさせる親分ではないと思う。あるとすれば“忖度”。豊田より一回りも下の世代になって、回りの人たちが勝手に慮ってしまったのではないでしょうか」と。

またダイハツ管理職の一人は「トヨタにはノーと言えない文化があります。新興国では、現地の法規制や商習慣を踏まえて進めます。ところが、トヨタは『そんなに費用を積んだり時間がかかるなら、ダイハツさんに頼む意味がない』と迫ってくる。『できない』とは言えず、現場に無理が生じました」と。この「現場に無理が生じました」というのは、何となく分かるが、ダイハツは認証試験で相も変わらず30年以上もデータの捏造(ねつぞう)や改竄(かいざん)を行ってきたのである。

この間、世の中も変わり、もちろん企業内部のいわゆる企業風土も変化しただろう。しかし一連のデータの不正操作は続き、それに対し行政側も不正を見抜けず、能天気にも品質にお墨付きを与えてきたわけだ。消費者は常に危険と隣り合わせだった。なぜこういう不条理が見落とされてきたのか。

「文春」の以下の記事では、延々と豊田会長の社長在任中の女性問題や、「一家言ある副社長を次々放逐した」と憤る社外取締役の声を載せて中心者の管理責任を問うている。一応妥当な見解だが、豊田会長の振る舞いと今回の不祥事は直接どう関わりがあるのか、読者はそこを知って納得したいはずだが-。

製造現場の問題衝く

一方、「財界の大御所たち、豊田章男を叱咤激励す」(週刊現代2月17日号)でも産業界の経営者たちがトヨタの現状を憂慮し行く先を案じている。日本製鉄社長の橋本英二氏は「うちの場合も同じ製鉄所の中で日本製鉄本体が動かしている設備もあれば、サプライヤー(生産協力会社)に任せている部分もあります。本体とサプライヤーを含め、一言で言うと、日本の製造業全体のモノ作りの力が、以前と比べて落ちていると言わざるを得ない」。

また「うちも協力会社もそうですが、今は若い人がすぐに辞めてしまう。製造現場では若い人が集まらず、高齢者や未熟練者が増えている。規模が小さい協力会社になるほど、よりシビアな状況です。製造業の現場は以前よりかなり弱っています」とズバリ、製造現場の実情を衝(つ)いている。

確かに1960~80年代にモノづくりに励む若者たちを引き付けたのは自動車だった。将来、自動車の設計、製造の職に就きたいという学生がどんどん増え、卒業後、彼らは自動車メーカーに入社。トヨタやホンダなど世界に知らしめた大手メーカーの担い手となっていった。彼らは既に引退している。筆者(片上)が、自動車メーカーOBから聞いた話だが、「当時、設計分野も含め製作現場には、当然、車好きの連中が揃(そろ)っていた。また内部の目があって、ろくでもない車を造ったりすれば承知しないぞという、クルマを愛する管理者の目もあった。とても不正が許容されるというような雰囲気ではなかった」と明かしている。製造現場の弱体化↓30年来のデータ捏造の不正の定着化、と見れば、一応、納得がいく。

創業の原点見失うな

今、車造り全般で、中国、インドなどの追い上げも激しい。週刊現代の記事では「新しい頭脳は育っているのか」という問題も見据えている。また元ペンタックス社長の浦野文男氏は「(トヨタは)創業の原点を見失うな」とも説く。今回の不祥事の顛末(てんまつ)ということでは、「現代」の記事の方に説得力がある。

(片上晴彦)

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