「ワクチンの真実」を論証し正しい判断のための議論促したNW日本版

注射のイメージ(Photo by Mufid Majnun on Unsplash)
注射のイメージ(Photo by Mufid Majnun on Unsplash)

統計の裏付けを付記

新型コロナワクチンは効果があったのか、それもと人体に何らかの悪い影響を残したのか。コロナ禍が収まってみて「あれは何だったのか」の思いを持つ人々は多い。それを受けてなのか、ニューズウィーク日本版(2月20日号)が「あなたが打ったワクチンの真実」を特集している。

特集といっても「國井修元長崎大学熱帯医学研究所教授」による10㌻に及ぶ「論文」である。学者にとってこれを「論文」と呼ばれるのは不本意だろうが、素人が読む分には十分に難しい。専門用語と「エビデンス」や統計の裏付けを丁寧に付記した記事なのだから。週刊誌読者の年齢層「60代から70代」を考えると、読みこなしはするだろうが、集中力がいるし紙幅も多い。

「タイパ」という言葉をご存じだろうか。「タイムパフォーマンス」つまり時間効率のことだ。最近は何事も短時間で要点だけを知りたいという“せっかち”な風潮になってきている。それに照らせば、この長大な論文はいかにコロナワクチンに関心があっても「要するに結論は何!」と読者をイラつかせるには十分だろう。

とはいえ、「ワクチンのせいで過剰に人が死んでいる?国内外のデータを基に誤情報と陰謀論を検証する」となればページに手がいく。

有効だったワクチン

その前に、國井教授とはどういう人物なのか。コロナワクチンを巡っては専門家の中にはアンチもおり、その言説の是非は素人には分からない。経歴や業績を見て自分なりに判断するしかない。同誌によれば國井教授は「ジュネーブにある国際機関『グローバルファンド〔世界エイズ・結核・マラリア対策基金〕』の前戦略・投資・効果局長。これまで国立国際医療センターやユニセフなどを通じて感染症対策、母子保健、緊急援助などに従事し、100カ国以上で開発援助活動を行」ってきた人物である。

さて、まず「有効性」。本当にワクチンは効いていたのか。その前に有効性とは「①感染・発症の予防②重症化・死亡の予防」のことだが、結論から言えば効いていた。「2020年12月からの1年間だけでワクチン接種によって世界で1980万人の命が救われたとの推計もある」としている。もちろんこの前に長々と製造会社別によるワクチンの特性、国によって違う取り組み、接種回数、入院率、重症化率等々、条件の違いをいちいち説明しているが、「ワクチンがなければ今の5倍以上に死者が増えていた可能性がある」というのだ。

次に「安全性」。「ワクチンに関連する重篤な副反応の疑い」として「心筋炎や心膜炎」が取り上げられた。これも「接種せずに新型コロナに感染して心筋炎にかかる可能性のほうが圧倒的に高い」とする。それに「接種後の副反応疑いとして、世界で20件の研究報告から54症例が報告されたが、発生頻度は100万人当たり0・2例程度」だとして、「これをワクチンによる副反応とするには頻度が低い」という。

続いて「超過死亡が増えたとの言説が出回っているが、これはさまざまな研究で否定されて」おり、むしろ「21年のデルタ株や22年のオミクロン株の流行による多くの超過死亡をワクチンによって防ぐことができたとも言える」のだそうだ。

長期的な信頼が必要

「誤った情報が急速に拡散し、社会に影響を及ぼすインフォデミックや陰謀論を基にしたプランデミックは全くの嘘でなくとも、信頼できないデータや情報を基にしていたり、信頼できるデータや情報を使っていても、その解釈やそこからの推測が誤っていたりすることがある」と國井教授は警告する。

冷静で正しい判断をするためには「普遍性、論理性、客観性のある議論」がなされるべきだと國井教授は指摘し、次にくるパンデミックのための備えとして「国民の不安や懸念に向き合い」「国民からの長期的な信頼を得る」必要があると強調した。

人は自分が信じたいものを信じるもの。ワクチンに疑いを持つ人にとってこの記事はどう読まれるだろうか。

(岩崎 哲)

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