習氏との面会かなわず
「パンダ」で危機感薄めるな
公明党の山口那津男代表らは11月22~23日の日程で訪中し、中国要人と会談した。同党の日刊機関紙「公明新聞」は訪中当日の記事のほか、26日付の日曜版には訪中を振り返る山口氏のインタビューを掲載した。
今年は日中平和友好条約締結から45年の節目の年だ。また訪問直前に党創設者でもある創価学会の池田大作名誉会長が死去し、23日には全国を中継でつないだ「創価学会葬」が執り行われた。学会はもちろん、党でも追悼の雰囲気が色濃かった。池田氏は生前、日中関係を特に重視しており、訪中がより重要な意味を持つことになったのは言うまでもない。
山口氏は出発前日の21日、「党創設者が開かれた日中友好の『金の橋』を渡り、日中関係の永続的な安定と繁栄のために役割を果たしたい」と意気込んだが、習近平国家主席との面会はかなわなかった。山口氏が代表に就任してから今回が7回目の訪中だが、最後の習氏との会談は2017年だ。影響力低下の感は否めない。
26日付1面には、山口氏の帰国後のインタビューが「日中友好『金の橋』強固に」「信頼構築へ率直に対話」「交流の促進、幅広い分野で」との見出しで掲載された。山口氏は初日に会談した共産党序列5位の蔡奇・政治局常務委員について「習氏の最側近であり、公明党への配慮を強く感じます」と強調。中国要人らから池田氏へ哀悼の意が示されたことや、「与党交流協議会」再開の提案があったことなどを報告した。
気になったのは、仙台市長から預かったジャイアントパンダ誘致の親書を届け、中国側から前向きな反応を得たという部分だ。上野動物園にシャンシャンが来た時の盛り上がりを思い出せば、パンダ誘致は確かに魅力的だ。しかし、執拗(しつよう)に繰り返される領海侵入や中国当局による邦人拘束、日本産水産物の全面禁輸に代表される経済的威圧などが解決されないままに「国民感情の改善」(山口氏)に乗り出すのは危険だ。
米メディアによると、習氏は11月のバイデン大統領との米中首脳会談で、台湾統一を明言した。また新疆ウイグル自治区ロプノールで核実験場の再建を進めている可能性があるとも報じられている。覇権主義的な動きを強める姿勢は変わっておらず、「パンダ」で危機感が薄まる事態は避けなければならない。
(亀井 玲那)