枝野氏との居酒屋談議でツッコミなく拍子抜けの産経 対照的な朝日

菅直人元総理と街頭演説に立つ立憲民主党の枝野幸男代表(当時)=2017年10月14日午後、東京都武蔵野市の吉祥寺駅前
菅直人元総理と街頭演説に立つ立憲民主党の枝野幸男代表(当時)=2017年10月14日午後、東京都武蔵野市の吉祥寺駅前

「もう一回政権取る」

岸田文雄政権の支持率低迷に加え、自民党の派閥のパーティー券疑惑を巡る批判も高まり、政権与党の足場が揺らいできた。となれば、野党の動きが注目される。立憲民主党の枝野幸男前代表が産経紙上で「もう一回政権を取って、首相になるつもりでやっている」と気勢を上げている(10日付)。

枝野氏が産経に? それだけでも目を引くが、見出しに食指が動いた。「次は『上川政権』ではないか 衆院解散ならこちらは女性党首を担ぐしか」「安倍さんの死去で開いたパンドラの箱 『野党連携』古くなった」とある。

枝野氏は安倍氏死去を「大政奉還、黒船が来た規模」の大転換と捉え、「野党連携」のみならず「第三極」「身を切る改革」と言ったフレーズも通用せず、新たなエッジを立てる必要があると語っている。

詳しい話はネット「産経ニュース」に9日から計5回掲載とあるので、それを読むと聞き手は『居酒屋コンフィデンシャル』(新潮文庫)の著作がある政治部記者の水内茂幸氏だった。何のことはない、焼き肉店での雑談である。夜の酒場で本音を聞き出そうという趣旨は分かるが、酒井充政治部長と松本学野党キャップも同席している。産経らしいツッコミの一つぐらいあってもよさそうだが、それがなく拍子抜けした。

外交安保はほぼ出ず

産経16日付コラム欄で榊原智論説委員長は来年1月の台湾総統選、11月の米大統領選を見据え、「来年の日本が国際政治上もまれな暴風圏に突入する」とし、「『アベ政治を許さない』と騒いだ勢力、人々は安倍政権以来の外交安保政策への攻撃を強めるだろう。だが、それに屈したら日本の平和と繁栄は失われる」と警鐘乱打している。枝野氏はその騒いだ勢力の筆頭だが、居酒屋談議では外交安保の話はほとんど出てこない。

枝野氏は今年8月に「枝野ビジョン2023」を発表している。その中でも外交安保政策は付け足し程度に軽く扱い「国際協調と専守防衛」とあるのみで「『戦争をしない、できない』国際社会の構築を目指す」と強調している。相変わらずの観念論である。

おまけに居酒屋談議での「担ぐ女性党首」に「辻元清美参院議員や蓮舫参院議員、西村智奈美前幹事長」を挙げているから呆れた。新たなエッジどころか古びている。ツッコミどころ満載なのに産経諸氏は沈黙だ。酒の席とはいえ、いささかボケたか。

これとは対照的なのが、朝日の菅直人元首相(立憲民主党最高顧問)インタビューである(15日付)。聞き手は政治部の三輪さち子記者で「(民主党政権の)光と影。期待と裏切り。民主党政権の渦中にいた人が政界を去るという。市民運動から首相に上り詰めた菅直人氏だ。原発事故時に首相として対応。批判を浴び退陣に追い込まれた人は今、何を思うのか。権力の中枢に身を置いた政治家の言葉を求め、会いに行った」という。

的確な指摘した朝日

真っ向勝負のインタビューで、「取材を終えて」で三輪記者は菅氏に三下り半を突き付けていた。ちょっと長いが引用する価値はあろう。

「政治部に来て最初に担当したのが菅首相だった。あれから12年。市民運動や社民連を語る際は生き生きとしているのに、民主党政権となると、とたんに口が重たくなった。消費税発言を『失敗』と認めたが、その言葉の響きはむしろ軽く感じた。菅氏と小沢氏(注=小沢一郎氏のこと)。異質なもの同士の『役割分担』で政権交代を成し遂げたと語ったが結局、続かなかった。民主党政権に何が足りなかったのか。菅氏からその答えを聞くことはできず、見いだそうとする姿勢もうかがえなかった。非自民党政権にリアリティーが感じられない理由は、そこにあるのではないか」

的確な指摘だ。「もう一回政権を取って、首相になるつもりでやっている」という枝野氏からもリアリティーは感じられない。それを突かない産経政治部はどうかしている。(増 記代司)

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