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大胆な“ソウル港”構想

金浦のソウル編入の裏側

韓国では金浦市のソウル編入による「メガシティソウル」が政界だけでなく、経済界、社会全般での関心事になっている。単にソウルの拡大という次元だけでなしに、漢江という大河を利用した水運開発にもつながる話だからだ。

新東亜(11月号)でノ・ジョンテ経済社会研究院専門委員が「金浦をソウルに?ソウルを港に!」を書いている。ここで部外者(外国人)として気付かされるのは空港で親しまれている金浦が実は金浦市にはなく、ソウル市江西区にあるということだ。

「空港の敷地は京畿道金浦郡楊西面だった。ところが1963年、ソウルの境界拡張とともに楊西面がソウルに編入され、金浦空港はソウル内の空港になってしまった」のである。

ソウルは周辺部を編入しつつ現在の形になっているが、それが終結しているわけでなく、金浦のソウル編入の話が出るように、現在も拡張を続けている。

その際、ソウルを取り巻く京畿道を「京畿北道」と「京畿南道」に分割しようとの議論も出ている。単純に東西に流れる漢江を境界線にしようとすると問題が出てくる。ソウルの西側で大きく北に流れを変え、金浦市と江華島の北を巻いて北朝鮮と境界を接するからだ。そのため、金浦をソウルにすることで韓国の首都が北朝鮮と接することになり、安保上どうかという議論になる。

ここでもう一つ気付くことがある。大型遊覧船が行き交う漢江になぜ「ソウル港」がないのか、の理由だ。そう、河口に軍事境界線が走っているためだ。江華島と金浦市から指呼の間で軍事的に対峙(たいじ)していては、大型船で物資を運んだり、世界航路のクルーズ船を泊めることもできない。

ドイツでは河口から100㌔内陸にあるハンブルクが巨大な港湾都市であることと比べると、ソウルが漢江を使った水運を活用できないのはいかにも惜しい。

そこでノ・ジョンテ氏は敢(あ)えて「大きな絵」を描くべきだと主張する。「単純な外縁拡張を超えてソウルと首都圏の機能自体を完全に再構成することで、大韓民国の心臓を再び走らせる大きな絵に与野党を超えた大合意がなされるべき時となったのだ」と。

前の左派政権では「平和経済概念」の一環として提案されたことがあったが「北に利益を与える」ことばかり優先したため、保守の反発を食らった。実現するには北朝鮮との緊張緩和、安全確保など簡単ではない課題が多いが、“ソウル港”という「大胆で新鮮な討論が開かれる」とは、魅力的に聞こえる。

(岩崎 哲)

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