独で広がるイスラエルへの歴史的責任論、一方で反ユダヤ主義的言動も

イスラエルからの爆撃で破壊されたガザ地区=11月12日(パレスチナ、ガザ)(UPI)
イスラエルからの爆撃で破壊されたガザ地区=11月12日(パレスチナ、ガザ)(UPI)

イスラムVSユダヤ

パレスチナ自治区のガザ地区を2007年以降、実効支配しているイスラム組織ハマスの10月7日のイスラエル奇襲テロ事件は中東情勢に大きな衝撃を投じただけではなく、世界のイスラム派テロ活動にも大きな影響を与えている。

英国の「キングス・カレッジ・ロンドン」で教鞭(きょうべん)を執るテロ問題専門家のペーター・ノイマン教授は8日、オーストリア国営放送(ORF)とのインタビューで、「『10月7日』前はイスラム過激主義やテロ活動の危険性は欧州では少なくなってきたと受け取られてきたが、『10月7日』後、再び感情的にも高揚し、活発化してきた。ハマスとイスラエルとの戦闘はシリア内戦のようなものでなく、その中心的テーマはイスラム対ユダヤだ。聖地、エルサレムでの戦いだ。ハマスはSNSを通じて世界のテロリストたちを活動に駆り出させている」と警告を発している。

ハマスが10月7日、イスラエルとの境界フェンスを破壊、侵入し音楽祭に参加していたゲストや集団農園(キブツ)を襲撃して1300人余りのユダヤ人らを射殺、200人以上の人質をガザ地区に拉致した「奇襲テロ」が起きると、ドイツ側の反応は素早かった。ショルツ独首相は17日イスラエル入りし、ネタニヤフ首相と会談した。

副首相声明が大反響

ハマスの奇襲テロ事件に対するドイツの立場を最も明確に述べたのはドイツ連邦のユーチューブチャンネルでのハベック副首相(経済相兼任)の声明だろう。同副首相は「イスラエルと反ユダヤ主義」というタイトルで9分40秒の動画でハマスのテロを厳しく批判する一方、イスラエルに対して、「ドイツは常にイスラエル側を支援する。その連帯には制限がない」と強調し、イスラエル支援を「ドイツの歴史的責任」と呼んだ。同動画は6日間で100万人以上の国民が視聴、他のSNSでの閲覧回数を含めると、数百万回に及ぶという。

イスラエル軍の空爆でガザ地区のパレスチナ人に多くの犠牲が出てくると、アラブ・イスラム諸国だけではなく、欧米社会でもイスラエルは空爆を中止、人道的停戦を実施すべきだという声が高まってきた。アラブのメディアでは、イスラエル軍の報復攻撃で苦しむガザ地区のパレスチナ人の状況を映像でリアルに伝え、イスラエルの軍事攻撃に対して国際社会からの批判を煽(あお)っている。

一方、ドイツ民間ニュース専門局ntvはイスラエル軍のプレス担当官と頻繁にインタビューし、イスラエル側の視点を詳細に報じている。ntvはイスラエル側の狙いを紹介することで、欧米社会の人道的な視点でのイスラエル批判に対して可能な限り客観性を持たそうと努力している。

ドイツ政府がイスラエルへの全面的支援、連帯を表明し、ハベック副首相のドイツ人の歴史的責任論は大きな反響を呼んだが、ドイツ国内で反ユダヤ主義的言動を拡散させ、ドイツ社会を分裂させたことも事実だろう。アラブ・イスラム諸国出身の国民や移民は週末にベルリンのミッテ地区のアレクサンダー広場などでパレスチナ支援デモを行っている。ドイツのイスラム教徒中央評議会のアイマン・マジエク議長は今月3日、ラジオ局ドイチュラントフンクのインタビューの中で、親パレスチナデモでの反ユダヤ主義的言動を非難し、「集会に参加する際には注意すべきだ」と呼び掛けている。

テロリストの歳低下

ハマスはイスラエルとアラブ諸国との関係正常化を停止させ、アラブ諸国に圧力をかけている。同時に、欧米社会を分裂させ、欧州に住むユダヤ人にもはや安心して生活できないという不安を与えることに成功している。

なお、ノイマン教授は、「イスラム派テロリストの年齢は年々、低下している。10年前は18歳から25歳が多く、男性だけだったが、インターネット、TikTokなどのSNSの影響が大きく、これまで以上に若い青年たちがイスラム過激思想に惹(ひ)かれ出している」と指摘している。(小川 敏)

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