ガザ急襲、病院爆発を巡る「情報戦」を有利に展開するパレスチナ側

ガザ地区でのイスラエル軍の砲撃(UPI)
ガザ地区でのイスラエル軍の砲撃(UPI)

原因・死者数は不明

イスラム組織ハマスによる襲撃から2週間余りが経過、現地の情勢は悪化の一途をたどっている。地上侵攻が開始されれば、さらに死傷者が増加するのは避けられない。

ガザの病院では爆発がありパレスチナ保健当局から「爆撃で500人死亡」という情報が流れた。だが、原因、死者数ともに真偽は不明。パレスチナ、イスラエル双方の主張は食い違い、「紛争は情報戦の様相を呈している」(英BBC)。

各紙が「爆発」と報じる中、米紙ニューヨーク・タイムズは早速、「イスラエルが病院を爆撃、数百人が死亡」と報じた。その後、状況証拠からパレスチナ側から発射されたロケット弾が落下した可能性が指摘された。真相は依然不明だ。

ニューヨーク・タイムズはその後、「爆撃で500人超が死亡」とし、次いで「爆発で500人超が死亡」と内容を後退させた。X(旧ツイッター)は17日、「信頼に値する」と認められた企業アカウントに付与される「金色認証バッジ」を剥奪した。病院爆発を巡る報道が原因ではないかとみられている。

フォロワー数は5500万に上り、世界的に見てもトップクラス。その影響力は絶大だ。速報性を重視するあまり、未確認の情報を流した結果なのだろう。インターネットで時々刻々情報が更新される昨今、ニュース報道の難しいところでもある。

もともとパレスチナに同情的でリベラルなニューヨーク・タイムズである上に、ガザ急襲を巡っては世界的にパレスチナに同情的な見方が多く、そういった世論に引っ張られた可能性もある。報道に思い込みは禁物だ。

パレスチナのイスラエルへのロケット弾攻撃は今に始まったことではない。数十発、時には数百発が短期間に撃ち込まれることもある。さらに、射程が年々伸びている。それを支援しているのはイランとみられている。

ロケット弾「誤射」か

だが、パレスチナが発射するロケット弾の1割ほどがガザ地区内に落下していることはよく知られている。もともと精度は低く、どこに飛んで行くか分からないのだから、パレスチナ側の「誤射」の可能性はあろう。

イスラエル紙エルサレム・ポストはイスラエル軍報道官ダニエル・ハガリ准将の話として、20日に発射されたロケット弾のうち5分の1は「誤射で、ガザ地区内に着弾し、民間人が死亡した」と報じた。

ハガリ氏によると、7日の急襲後に発射された数千発のうち550発はガザ内に着弾したという。

BBCが現場の動画、画像を検証している。SNSの20秒の動画から「飛翔体の風切り音がして、爆発が起き、大火災が発生した」と伝えた。カタール衛星テレビ局アルジャジーラの報道によると、ちょうど病院爆発があった時間に、一つの明るい光が上昇し、2度光った後、方向を変え、爆発したという。

BBCによると、一部のコメンテーターはこれらの動画から、「ロケット弾が爆発、または分解した」のではないかとの見方を示している。

また、3人の専門家に取材した結果、いずれも、イスラエルの空爆から予測される状況とは「一致しない」との見方を示している。

米バンダービルト大のアンドレス・ガノン助教は「地上の爆発の規模が小さく、弾頭の爆発というよりも、残ったロケット燃料が引き起こした爆発の可能性」を指摘した。

死者数に関してはパレスチナ保健当局が471人と発表したが、イスラエル軍は「意図的に膨らませた数字」と主張している。

困難な爆発物の特定

通常、現場に散乱した破片などで爆発物の特定ができるが、現場へのアクセスが制限されているため、それも困難とされている。

爆発の報道を受けて、イスラエル非難の声が世界中で高まり、パレスチナ支持のデモが繰り広げられた。武力で圧倒するイスラエルだが、「情報戦」ではパレスチナ側に分があるようだ。

(本田隆文)

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