苦境に立つ中国経済 習氏の考え指摘する産経ルトワック氏コラム

中国・上海の様子(Photo by Edward He on Unsplash)
中国・上海の様子(Photo by Edward He on Unsplash)

ナイーブな朝日社説

朝日は9月25日付社説「一帯一路10年 協調してこその繁栄だ」で、ユーラシア大陸を海路と陸路で結ぶ「一帯一路」経済圏構想が今年で10年を迎えることを総括した。同社説は、「成果は上がっている」との中国側の見解とは裏腹に、「積極投資は多額の焦げ付きも発生させ」、中国がスリランカのハンバントタ港開発における借金を形に、99年間の港湾運営権を得たことを例に「『借金漬け外交』『債務の罠(わな)』として批判の的となった」と指摘する。

その上で同社説は「国内からも疑問の声は上がっている。昨秋の国際関係をめぐる清華大(北京)による意識調査によると、対外援助が『多すぎる』『やや多すぎる』とした回答が、合わせて半数を超えた。資金力にものを言わせた外交は曲がり角に来ている」と結論付ける。

だがこの見解はナイーブ過ぎる。札束で相手のほほをなでるような中国型ばら撒(ま)き外交が曲がり角にきているのは事実だが、中国の外交ベクトルを変える力は国民意識を考慮した内圧によるものではなく、厳しくなってきた財政事情によるところが大きいとみるべきだろう。ない袖は振れないというのは、個人でも国家でも同じだ。

経済苦境浮き彫りに

その中国の経済的苦境の実態を、データ隠蔽問題を通じて浮き彫りにさせたのが日経の9月26日付社説「習近平政権は中国経済の苦境を隠すな」だ。

同社説は、中国が年齢層で分けた失業率の公表を7月分から停止したことを受け、「中国経済の実態はいわれている以上に悪いのではないか。そう思われても仕方がない。習近平政権が強める経済や社会にかかわる情報の統制は、自分で自分の首を絞めるだけだ」と書いた。都合の悪いデータを隠蔽する体質は、強権国家の体質そのものだ。

嘘(うそ)には、2種類の嘘がある。偽りを語る嘘と、真実を隠蔽する嘘の二つだ。いずれも自らの保身を考えただけのエゴイスティックな行為だ。そして嘘の煙幕が期限切れを迎えると、こうした強権国家は軍事力や国家権力をかさに着て威圧を始める。

同社説はさらに「中国経済は今年、ゼロコロナ政策の終了で急回復すると期待されていた。実際は不動産不況が景気の足を引っ張り、デフレに陥るリスクすら語られている」と述べ「人びとの不満は高まる一方だが、習政権は打つ手を欠く」とバッサリと切る。

習氏は経済を放棄か

だが、そもそも習近平政権が経済政策を真剣に考えているのか疑問がある。民のかまどから煙が出ていないことから仁徳天皇が無税政策を打ちだしたとされるように、古来、経済政策は国家存続の要の政策だった。ましてや共産主義というイデオロギーを棚上げした中国は、右肩上がりの経済的恩恵の中で政権の求心力を維持してきた経緯がある。その国家の要の経済政策を放棄しつつあるのではと、目からうろこの指摘をするのが産経新聞で月1回のコラムを担当する米歴史学者ルトワック氏だ。

少し古いが8月22日付産経コラム「世界を解く」(1、3面)でルトワック氏は、「台湾の武力統一に向けた具体的な計画を策定している」習氏に言及。「台湾有事が中国経済に悪影響を及ぼすのは必至であることを考慮すると、実は習氏は中国を豊かにすることに関心が薄いように思える」と感想を述べ「習氏が目指すのは、中国を若き戦闘国家に仕立て上げることなのだ」と戦国時代に生きる習氏の頭脳構造を解析してみせる。

朝鮮動乱に加担した毛沢東は、米軍を主体とした国連軍を朝鮮半島から駆逐した後には台湾併呑を考えていた。38度線で休戦となった後も戦争に備え、主要軍需産業を攻撃リスクの高い沿海部から外し四川省など内陸部に構築していった経緯がある。その毛沢東をモデルとして動いている習氏が、戦争に備えこれまでの森林保護政策の「退耕還林」(耕作地を林に戻す)から、180度方向転換し「退林還耕」(林を耕作地に転換し食増産に励む)政策を推進しているのも、戦時に備えた籠城できる食糧備蓄に動き始めていると納得できる。

(池永達夫)

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