TOB成立の東芝に早期の混乱収拾と経営再建を鼓舞する保守系紙

他紙も掲載が欲しい

22日付日経「株式市場を去る東芝の教訓」、24日付産経「改革加速して再建を図れ」、25日付読売「経営安定化の成果が問われる」、26日付本紙「再建に向け混乱に終止符を」―。

国内投資ファンド、日本産業パートナーズ(JIP)の陣営による東芝の株式を対象にしたTOB(株式公開買い付け)が成立したのを受けて、社説で論評を掲載した各紙の見出しである。

いずれも保守系紙ばかりで、朝日や毎日、東京の3リベラル紙からは、このテーマでの社説掲載はなし。単なる偶然か、それとも何か故あってかは分らないが、日本を代表する電機メーカーの上場廃止となる事態だけに、リベラル紙からも掲載がほしいところである。

さて、掲載4紙の社説であるが、いずれも「物言う株主」の影響から解放されることで、「再建に力を尽くしてほしい」(日経)、「事業構造改革を加速してほしい」(産経)、「長年にわたる経営の混乱を早期に収拾してほしい」(読売)、「経営の混乱に終止符を打たなければならない」(本紙)と厳しくも前向きに評価する。

経済安保の視点でも

各紙がそう言うのも、確かに頷(うなず)ける。「日本屈指の名門企業で、それほどの大企業」(読売)である東芝が、2015年の不正会計問題発覚以来、著しい迷走、混乱を続けてきたからである。

読売は、そのような東芝が、「株主構成を変えるために上場廃止を選ぶのは異例の行動だ」として、「着実に経営再建につなげる成果が問われよう」と指摘したが、その通りである。

各紙も指摘する通り、東芝は経営危機を乗り切るため、既に稼ぎ頭の家電や半導体メモリー、医療機器といった主力事業を売却しているだけに、「経営再建を担う新規事業の育成が急務」(産経)なのである。

産経は、「一方で経済安全保障の視点も忘れてはならない」と釘(くぎ)を刺す。東芝は原発や量子暗号など安全保障に欠かせない高度な技術も抱えている。同紙は「海外への技術流出を防ぎつつ、今後の確かな成長につなげる戦略が問われる」としたが、同感である。

この経済安全保障の視点では、読売が「多くの国内企業が加わった支援策がまとまったのも、こうした点が考慮されたのだろう」とし、本紙も「JIPを中心とする『国内連合』には、外資による東芝の技術の流出を避けたいとの思いもあるのだろう」と同様の見方を記す。尤(もっと)もである。

「教訓」に重きの日経

掲載4紙のうち、日経だけはこの経済安全保障の視点がなかった。同紙は冒頭に挙げた見出しの通り、「教訓」に重きを置いた。その教訓も東芝への直接的な教訓ではなく、株式市場への教訓である。

同紙は「8年に及ぶ東芝の混乱」が株式市場に残した重要な教訓として、企業統治(コーポレートガバナンス)の重要性と、株式市場と真摯に向き合うことの大切さを挙げ、「企業や投資家は重く受け止めるべきだ」と指摘した。

前者では上位下達の官僚的な企業文化が強く、米子会社を含め、経営を厳しく監視できなかった。後者では不正会計が発覚した直後の説明が明瞭さを欠いた、などである。

日経がこの教訓で強調するのは、「新しい株主は、非上場となる東芝の再建を監視する責務がある」として、「経営陣や社員と再生の青写真を共有し、広くステークホルダー(利害関係者)への説明責任を果たしてほしい」ということで、経営陣ではなく株主への注文なのである。

同様な内容でも産経などは、今回のTOBに参加した国内企業連合には、大手電力の中部電力や半導体関連のロームなどが名前を連ねているとして、「こうした企業とも協業を図り、TOBで得た資金で将来の成長に資する投資も積極化してほしい」と経営陣への注文である。この方が東芝への熱意が強く伝わる。(床井明男)

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