ジャニーズ性加害問題でご都合主義の大企業をやり玉に挙げた新潮

見出しを見て、手のひら返しでジャニーズ攻撃を始めたメディアを揶揄(やゆ)する記事かと思ったが違った。週刊新潮(9月21日号)の「『ジャニーズ大炎上』何をいまさら『人権』『正義』の大合唱」である。

新潮がやり玉に挙げているのはメディアではなく、CMや広告からジャニーズタレントを締め出す決定をした大企業のことだ。少年たちに性加害(とは無味乾燥な単語だが、要するにレイプ)を加えた故ジャニー喜多川氏の行動は弁解の余地のない“犯罪”だが、ジャニーズ事務所に所属しているというだけで、活動の道を断たれる多くのタレントには罪はない。

広告契約の見直しに踏み切ったのは「東京海上日動火災保険、日本航空、キリンHD、アサヒGHD、サントリーHDなど」そうそうたる大企業である。その理由は「人権方針に反する」だ。

これには性被害に遭った当人である「『ジャニーズ性加害問題当事者の会』代表の平本淳也氏」ですら、「タレントたちの起用を止めたり契約を打ち切るのは、それこそ人権侵害だと思います」と反発している。

「人権と言いながら、やっていることはタレントのポイ捨てですよ」(平本氏)、「性被害を受けたタレントには二重の苦しみになる」(コラムニストの辛酸なめ子氏)、「広告の一斉取り下げは行き過ぎです」(テレビプロデューサーのデーブ・スペクター氏)など、同誌は次々にコメントを並べる。

今までさんざんジャニーズブランドの“恩恵”を受けてきた企業が「人権」や「コンプライアンス」を盾に少年青年タレントの夢を断つ。これが消費者にどう映るかは今後を見てみなければ分からないが、少なくともジャニーズに所属する青年タレントや多くのファンは大企業のご都合主義を快くは思わないだろう。

第一、ジャニーズタレントの起用を止めただけで、今までのことを「なかったこと」にできるわけもない。それに人の噂(うわさ)も七十五日、ほとぼりが冷め、強固なジャニーズファンが残っている限り、いずれジャニーズを起用せざるを得ない。その時の言い訳を何とするつもりなのだろうか。

おそらく、東山紀之新社長の下で立て直され、コンプラを整え、再出発した事務所を見て、上から目線で「評価」を下しつつ再開させるのだろうが、その間、振り回され、時間を失うのはタレントたちである。同誌はこれらの大企業が再びジャニーズタレントを起用する時には、彼らの言い訳をしっかりと書いてほしい。

欧米の基準押し付け

それにしても、最近、大企業のコンプラアピールが目に付く。そもそもダイバーシティー(多様性)と言いながら、欧米リベラルが一つの基準をつくり、世界各地のそれぞれの事情を斟酌(しんしゃく)せず、それを押し付けて来る“横暴”がまかり通っている。

欧米の物差しで測り切れない、独自の文化的価値観を無視して、例えば「女性の起用が足りない」などと説教してくるのはお門違いも甚だしい。その社会で女性が力を持ち、活躍している場面はいくらでもあるのに、それらを測るメジャーを持たない者たちが自分の基準だけを押し付けてくる。黒船以降の不平等条約以来、それが続いている。

東京五輪の直前に、世界で事業を展開する日本企業が同性婚やLGBT(性的少数者)への理解を示すCMを突然流しだしたことがある。唐突感と違和感が半端なかったが“世界の目”を意識したアピールだった。すぐに消えたところを見ると、アリバイ的な性格だったことと、何よりも評判がよくなかったのだろう。

東山社長の手腕注目

最後に同誌はジャニーズがテレビ局などに持っている隠然たる力についても書いている。忖度(そんたく)によるタレント起用、あるいは他事務所タレントの排除など、旧弊にまでメスを入れられるのか、俳優業を諦め、ジャニーズに身を捧(ささ)げた東山新社長の手腕にも注目していってもらいたい。

(岩崎哲)

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