正論を主張し続けよ
一方、産経は2日付社説「処理水と対中外交 WTO提訴をためらうな」で、中国に対し海洋放出反対と不当禁輸をそれぞれ撤回し、科学的見地に基づく協議を求めている岸田政権へ「これだけでは行き着く先は泣き寝入りである。不十分だ」とばっさり切り捨てる。その上で同主張は「世界貿易機関(WTO)への提訴に踏み切るべきだ」と、一対一の対応ではなく、国際機関の土俵での戦いを迫る。
さらに産経は一日置いた4日付主張「日本学術会議 『処理水』ではだんまりか」で、「東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出について、学術会議が提言や見解を出していないのはどうしたことか」と疑問を投げ掛ける。
そして「学術会議法は『科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献』することが使命だとしている。使命を果たしているとは言い難い」と畳み掛ける。
真っ当な主張だと思う。中国のプロパガンダに対処するには、科学的真実に立脚した正論を主張し続けることが肝要だ。
中国は今もなお改革開放を叫び、外資の投資拡大を呼び掛けているものの、中国国民は普通の国際社会とは異質の世界に封印されつつある。外に開いた窓はあるものの、部屋の内には鉄格子がはまっている「中国式鎖国」の現実がある。
中国の憲法には言論の自由も集会の自由も保障されているとされるが、国民にそれを信じている人はいない。
電話のやりとりが当局の監視下にあるだけでなく、SNSへの投稿もチェックされ不適切と判断されれば直ちに削除される。時にその「言葉」ゆえに、公安に拘束されることも珍しいことではない。
そうした国際社会から隔絶された「中国式鎖国」状態の隣国に、真実の風穴を開けることができるのは科学的根拠に基づいた正論でもある。
真実の包囲網構築を
無論、中国が真実に耳を傾け、「日本を被告席に立たせる」(「人民日報」先月25日付評論)という政治的決定を覆すとは思えない。だが、客観的な科学的事実を世界に知らしめ、「真実による包囲網」を構築することは意味がある。
中国人民解放軍は20年前、政治工作条例に「世論戦、心理戦、法律戦」の「三戦」任務を加えた。これは中国の有利になるよう国際世論や相手国内の世論に影響を与え、心理戦で敵の士気を低下させ、国際法や国内法を駆使して中国への反発や抵抗を抑え込むという戦略だ。
今回の中国の措置は、世論戦の発動と考えられる。そうである以上、これに対抗するには旧態依然の1対1の対話ではなく、公的な第3者機関であるWTOに土俵を移すことや日本学術会議の科学的見解表明など、実効性のある有効な手立てを考えることが肝要だ。(池永達夫)





