警戒要す「汚染言説」
東京電力福島第1原発から生じる処理水が近く、海洋放出される見通しだ。これに対して反原発派は処理水を「汚染水」と呼んで国民の不安を煽(あお)っている。これが風評被害の源で、汚染水ならぬ「汚染言説」と断じてよい。メディアもしばしば「汚染言説」に与(くみ)して流布してきた。今回の海洋放出で警戒を要するのはこの種の「汚染言説」だ。
そもそも処理水とは何なのか。2021年4月に当時の菅義偉首相が処理水の海洋放出を決断した際、朝日は次のように定義し、今後これに従って報じるとした(同14日付)。放射線物質が高濃度の水を「汚染水」、多核種除去設備(ALPS)で処理された水を「処理済み汚染水」、その処理済み汚染水を再びALPSで処理した上で濃度を法令の基準以下にしたのを「処理水」―。この定義に異論はない。
今回、放出される処理水は海水でさらに薄めて法令基準の40分の1未満にして沖合約1キロ先の放水口から海に流す。国際原子力機関(IAEA)は7月に「(放出)計画は国際的な安全基準に合致」し、人や環境への影響は「無視できるほど」とする調査報告書を公表した。