現政権への不満募る
今年はバイエルンとヘッセンの両州議会選が控えている。来年に入ると、欧州議会選と旧東独の3州の議会選が待っている。旧東独地域を訪ねたFDP議員は「有権者が極右化しているのではなく、現政権の政治に不満がたまっているだけだ」という印象を述べている。換言すれば、国民が思想的に極右化したのではなく、ショルツ現政権への抗議票というのだ。
ショルツ首相は外交面ではポイントを挙げたが、外交でのポイントは長く続かない。ウクライナ戦争が長期化する傾向が見られ出した頃から、ウクライナ支援への国民の不満の声が聞かれだした。ウクライナ戦争の影響もあって、エネルギー価格、物価、住居代の高騰などで国民の日常生活は厳しくなってきたからだ。ショルツ政権が脱原発を実施し、再生可能エネルギーへの転換などを実施してきた中、多くの国民は未来に対して不安、不確実性を一段と感じだしてきた。
AfDは過去、難民の急増、新型コロナ感染拡大、ウクライナ戦争、エネルギー危機など、欧州が危機に直面している時に躍進してきた。その危機が続く限り、AfDの躍進にストップをかけることは難しい。妙案奇策はないのだ。AfD党大会では、クルパラ共同党首は「われわれは政権責任を負うことができる」と演説し、自信を深めている。
経済回復が最善の策
シュピーゲルはAfDの躍進をストップさせる選択肢を模索したが、見つけていない。一方、独週刊誌「ツァイト電子版」(8月6日)は「国民経済を回復させることが最善策だ」と述べている。ドイツの国内総生産は今年第1、第2四半期はマイナス成長を記録した。経済学者は「ドイツ経済は深刻な危機に直面しており、今年の展望は暗い」という。リセッション(景気後退)だ。AfDのさらなる飛躍の条件は整っているわけだ。(小川 敏)