トップオピニオンメディアウォッチ尹政権の対日外交チェック 「自発的寄与」求める

尹政権の対日外交チェック 「自発的寄与」求める

「月刊中央」(8月号)
「月刊中央」(8月号)

法に対する考え方 日韓で相違

韓国は尹錫悦政権になって対日関係が急流に乗っている。一人の決断によって対外政策が百八十度変わってしまうのを目の当たりにすると、手続きと合意を積み重ね時間をかけてようやく方向転換する、という日本の政治がもどかしく感じる。

しかし、韓国は突然変化したわけではない。前の文在寅政権で最悪に陥った日韓関係だったが、この期間にもこれを憂慮して対日関係の改善を求め、日韓協力の必要性を主張する声はあった。その先頭に立っていたのが駐日大使を務めた申(シン)珏秀(ガクス)氏である。中央日報が出す総合月刊誌月刊中央(8月号)で「尹錫悦政府対日外交チェックポイント」を寄稿している。

申氏はなぜ韓国は対日関係を改善しなければならないかの理由をこう述べる。韓国は今や「世界10位圏国家」へと躍進した。ならば「われわれが世界を眺める目も高まった力量と地位に見合うものへと成熟しなければならない」と。大人になったのだから大人の分別と振る舞いをすべきだということだ。

一方、韓国が10位圏国家として眺める世界はどうなっているか。中国の軍事大国化、台湾への野心、北朝鮮の核・ミサイル開発など、東アジア情勢は緊張度を増している。それだけではない。ロシアによるウクライナ侵攻は世界の外交と軍事に激震をもたらした。日米が主導するインド太平洋地域の協力関係にも韓国は関わっていかなければならない。

こうした時に韓国は民主主義、資本主義の価値観を共有する隣国日本と衝突していていいわけがない、というのが申氏の主張の核心だ。原稿では両国が陥った「複合多重骨折」状態を説明する。「慰安婦」と「元徴用工」問題、すなわち歴史問題である。

「韓国では日本が過去の歴史に対する反省と謝罪で出し惜しみするという認識が定着している半面、日本では韓国が過去の問題を解決しても、さらに別の問題を持ち出してゴールポストを動かすという認識が強い」

2015年の慰安婦合意が覆されてから、歴史問題での攻守が逆転した。これに加えて元徴用工裁判で韓国最高裁は韓国の日系企業の資産差し押さえと現金化を決めた。ここで万事休す。文政権は「司法の独立」を盾に政治的解決から目を背け、日韓関係はどん底に沈んだわけだ。

日韓が膠着(こうちゃく)した理由を申氏は法に対する考え方の違いだと説明している。「悪法も法という認識が強い日本と、正義に反する法は効力がないという認識が強い韓国の相異なった法文化」が問題をこじれさせたというのだ。この視点は面白い。日韓併合は1965年基本条約と請求権協定で解決済みとする日本に対して、「それでは正義が行われていない」と考える韓国では約束事が守られるはずがない。

ここで動けなくなった双方は「韓国では『日本軽視』、日本では『韓国無視』が交差する相互敬遠現象に陥って」しまった。この状態を動かしたのが尹大統領というわけだ。文政権の対北一辺倒外交から、尹氏の「グローバル中枢国家構想」へと転換した。

この構想を実現する第一歩は対日関係改善である。最大障害の元徴用工問題を韓国側の「第三者返済解決策」で突破した。その際、岸田政権が積極的に呼応しなかった点について、申氏は注文を付けている。尹政権は国内の強い反発に抗しつつ、支持率を下げながらも解決法を示した。これが韓国内で「受け入れられるためには半分を満たす日本の呼応が重要だ。その核心は被告日本企業の謝罪と自発的寄与が実現される」ことだと述べている。

「韓国はまず半分出した、次は日本だ」ということだ。日本を知る申氏からすれば「尹大統領の努力を認めて、頼むから日本よ、動いてくれ」ということだろう。だが日本からすれば、そんな約束はしていない。一方的押し付けに見える。むしろ慰安婦合意で決まった「少女像撤去」すらも履行されていない。徴用工では同様の訴訟が列をなしている。危なくて手が出せないのだ。

とはいえ日本がこのままノーアクションでいれば、いずれ韓国がしびれを切らす時が来る。そうならないための方策が双方に必要な時である。

(岩崎 哲)

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »