トップオピニオンメディアウォッチ「木原事件」報道で「Z氏」の存在出しながら正体明かさず引っ張る文春

「木原事件」報道で「Z氏」の存在出しながら正体明かさず引っ張る文春

「木原事件」と呼べず

だからといってこの二つをひっくるめて「木原事件」と呼ぶには無理がある。むしろ「木原」要素は限りなく薄い。それは文春自体が報じているのだ。8月3日号ではX子さんを事情聴取した刑事で現在は退官している「佐藤誠」氏が実名で登場した。佐藤氏は警視庁で「『オトせないホシ(容疑者)はいない』と評される“捜査一課のレジェンド”」である。X子さんを10回ほど事情聴取している。

その佐藤氏が「実は、俺は当初からX子が実行犯じゃないという感触を持っていた」と言い、8月10日号でも「これはね、離婚、二人(種雄さんとX子さん)の子供の親権争いだと思うんですよ」と述べている。当時X子さんには愛人がいた。同誌に「Y氏」として登場する。事件当日、X子さん宅に出向いている。だが到着と死亡時間が合わない。では犯人は誰だというのだ。

それから、木原氏が力を行使したという具体的な証拠として同誌は事情聴取が終わったX子さんと木原氏のタクシー車中での会話を挙げている。「俺が手を回しておいたから心配すんな」。しかし、この時、木原氏はまだ官房副長官にはなっていない。

文春は政治家の力を過大評価しているのか。これも実は同誌がそうは思っていないような節がある。捜査が打ち切られた背景にはもっと上の力、政治よりも警察の力が働いている、という見立てを隠している。佐藤氏が口にした「Z氏」の存在だ。

同誌が長々と連載を続け、登場人物を「X」から始めた理由が分からなかったのだが、このZ氏が出てくるに及んで、本当のターゲットがここにあることを強くにおわすためだったと読めてくる。Zの後はもうないからだ。

既成メディア及び腰

文春は7月28日に佐藤氏の記者会見を行った。ここでZ氏の正体が明らかにされるのか関心が集まったが、不発に終わった。8月10日号で「すべての疑問に答える」としながら、ここでも結局、会見の内容をなぞるだけ。「内閣改造」だとか「辞任は」とか、木原氏に話を持っていこうとしている。

文春の関心はどこにあるのか分からない。種雄さんが殺されたとするなら、真犯人は誰かを追及するのが本筋だろう。Z氏を出しておきながら、勿体(もったい)ぶって誌面化しない。ネットでは臆測だが名前も写真すらも溢(あふ)れているが、確証がなければ名誉毀損(きそん)になる。文春は確証を掴(つか)んでいるのか。

もしこの筋で話が進んでいけば、とてつもなく大きな事件になる。官房副長官が辞任するとかの政治部マターではない。社会部が大々的に動くことになるだろう。新聞、テレビなど既成メディアが及び腰なのも頷(うなず)ける。文春にしばらく引っ張らせるのか。

(岩崎 哲)

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