不自然に再捜査終了
最近、これほど面白い事件はないだろう。人が亡くなっているのだから「面白い」などとは不謹慎だが、まるで一級のサスペンスを読んでいるようだ。週刊文春が連続で報じている「木原事件」である。
内閣官房副長官である木原誠二衆院議員の妻「X子さん」の前夫・安田種雄さんが不審死を遂げた(2006年)。当初「自殺」として捜査は終了したが、コールドケースを扱う部署が12年も経(た)って再捜査に乗り出す(18年)。X子さんは任意だが重要参考人として事情聴取される。この4年前の14年、X子さんは木原氏と再婚しており、再捜査は「事件性なし」として“不自然に”中止される。ここに木原氏の「政治力」が行使されたのではないか、というのが文春報道の筋である。
こう見てくると事件は二つの側面がある。まず種雄さんの不審死。そして再捜査の不自然な終わり方だ。種雄さん死去の時点でX子さんと木原氏は婚姻関係にないから、もともと無関係。再捜査が中止された経緯で官房副長官という政権の中枢にいる木原氏が妻への事情聴取を打ち切らせ、再捜査自体も終了させた「疑い」があるとみて、もっぱらこれを追及しているのが文春だ。