盛り上がり欠く議論
これに対し、野党の極右政党「自由党」のキックル党首は「参加国はNATO加盟国だけだ。そのNATOとの共同ミサイルシールドはわが国の中立法とは一致しない。NATOとロシア間で戦争が勃発した場合、オーストリアはロシアとの戦争に巻き込まれる危険性が出てくる」と強調して、参加に反対の論陣を張った。
一方、スカイシールド参加を支持している政党は現時点では与党「国民党」の他、野党のリベラル派政党「ネオス」だ。
メディアと野党から中立主義に関する議論がようやく聞かれだしたが、少し盛り上がりに欠けているのだ。その辺の事情について、オーストリアの日刊紙「スタンダード」のペトラ・スタイバー副編集長は3日、「オーストリアはスカイシールドに参加するまでにはまだ十分成熟していない」と解説している。
いわく「わが国では現政権によって常に中立主義が都合の良いように解釈されてきた。脅威がある時は欧州の大国やNATOに保護義務があると訴え、助けを求められると『わが国は中立国だ』と弁明してきた」と指摘し、「自由党は移民に対する防御的な要塞(ようさい)の建設に賛成する一方、実際の爆弾に対する防御盾には反対している」と、自由党の論理をバッサリと切り捨てている。
「時代の転換期」まだ
ウクライナの「地雷除去支援」要請には、中立国という理由で紛争地での地雷除去を断ったオーストリアだが、自国の空域防衛の強化のためにNATOが構築中のスカイシールドへの参加をいち早く表明したわけだ(スカイシールドは25年にスタート予定)。スタイバー副編集長の「オーストリアは中立主義を自分の都合のいいように解釈している」という実例なのかもしれない。
ショルツ独首相はロシアがウクライナに軍事侵攻した後、「ツァイテンベンデ(時代の転換期)」をキーワードに国防を重視し、軍事費を増額し、ウクライナへの武器支援も積極的に行ってきた。そのドイツの隣国オーストリアには「時代の転換期」はまだ到来していないのだ。
(小川 敏)







