臭わせ誘導する朝日
社説は東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国を務めるインドネシアへのご訪問がよほど癇(しゃく)に障ったのか、「日本を含む西側先進国と新興・途上国との間には、ウクライナ情勢などをめぐって見解の相違があり、また、影響力を増す中国とそれぞれがどう付き合っていくかという難題が影を落とす」とし、「『グローバルサウス』の主要国である同国との関係強化を図ったとみられる」と、ご訪問をあくまでも政治的に捉え、さらにこう言った。
「『国益』をかかげて外交の手段として天皇や皇族を利用し、皇室のあり方に疑念を持たれるようなことがあれば、憲法の趣旨に反するうえに、培われてきた皇室に対する国民の信頼・支持にも悪い影響が及ぶ。世界が複雑多様化し、従来にも増して慎重な判断と手続きが求められることを肝に銘じて、政府は行動する必要がある」
まるで政府が慎重な判断も手続きもせずに行動したかのような言いざまである。そもそも「国益」はそれほど悪いものなのか。天皇は「日本国の象徴」(憲法第1条)なので、外国訪問や賓客を迎えるのには自ずと政治的意味を持つ。そのことを承知の上で朝日は政府が今回のご訪問を「『国益』をかかげて外交の手段として天皇や皇族を利用」しているかのように臭わせ、「皇室のあり方に疑念」を抱かせて「憲法の趣旨に反する」との見方へと誘導しているかのようである。
だが、今回のご訪問は朝日が言う「培われてきた皇室に対する国民の信頼・支持にも悪い影響が及ぶ」とは真逆に皇室への信頼・支持に良い影響を及ぼしている。そのことは当の朝日24日付社会面に載った「『未来志向』印象づけた旅」と題する好意的な記事でも知れる。ふつうの(つまりイデオロギー抜きの)朝日読者は違和感を覚えたのではあるまいか。