楽観的過ぎる自民党
一方、これに反論したのは自民党政務調査会長代行、新藤義孝。「全ての人が性の多様性を理解して穏やかな共生社会を創ろうというのが3条の目的に入っている。留意条項を付け加えたのは、あくまで留意することであって、それによって法案の中身が変わったわけではない。それから理念法ですから、この法律によって何かの権利が強くなったり、圧迫されたりすることはない」
日本維新の会、国民民主案を提出し、与党案に留意条項を付け加えることに手を貸した維新の会政務調査会副会長、小野泰輔は「議論の中で国民的な大きな対立があった。その中で、LGBT当事者に対して理解を促進する法の趣旨が広く国民に受け入れられる内容は何か、ということを、私どもと国民民主党で一緒に案をつくり出した」としながら、個人の価値観で異なる意見があるので、今後も「国民的議論をしっかりやる必要がある」と訴えた。つまり、法の施行は議論の終わりでなく始まりにすぎないというわけだ。
これらの意見の中で、筆者が特に注目したのは「理念法」を強調した新藤の認識の甘さ。テレビ向けの発言とはいえ、あまりに楽観的過ぎ、法の施行が埋めることの難しいLGBT当事者と一般人との溝をさらに広げることになるという洞察に欠けるのだ。その実例を示そう。