再生エネの無駄指摘
半導体と並んで今や国家経済安全保障の戦略物資の一つとなっているのが電池。かつて電池産業は日本のお家芸とも言える分野であった。しかし昨今は欧米のみならず中国、韓国が台頭する。加えて世界的潮流となっている脱炭素の目玉として挙げられる自動車業界での電気自動車(EV)化の波は、単に自動車本体のみならず、備え付けられている車載蓄電池を電力需給の「調整弁」に位置付けるなど、電力業界をも巻き込んだプロジェクトが国家のエネルギー戦略の柱として進行中だ。
そうした電池を巡るEV・電力業界の動向を週刊エコノミスト(6月13日号)が特集している。テーマは「電力が無料になる日」。いささか衝撃的な見出しだが、特集そのものは電力料金をゼロにしようという特集ではない。ただ、最初の記事の冒頭で「電力の200億円分をドブに捨てている」と提起するように再生可能エネルギーの無駄を指摘する。
もっとも、これは昨年11月に経済産業省が発表した全国八つの電力会社の2023年度の出力制御見通しの中で、再生可能エネルギーの普及が進む九州電力の場合、電力需要がない時間につくり過ぎて送電網で受け入れられない電力が最大7億4000万㌔㍗時に上る見込みだとしたことを受けたもの。同誌の試算では、これは一般家庭200万戸が1カ月に使う電気になり、これだけの電力を石油火力で発電した場合、金額ベースで約200億円かかる。
従って、「ドブに捨てている」というのは言い過ぎで、九州電力としては意図的に捨てているわけではなく、電力の送電網システムから出力制御を要請せざるを得ない状況になっているということなのだ。つまり、電力は供給が需要を上回ると電圧や周波数が上昇し、逆に下回ると低下する。大幅に変動すると電子機器の故障や最悪停電が発生する原因となる。