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自民党のオウンゴール LGBTで場当たり対応

現在、「トイレ」となっている案内表記=東京・新宿の「東京歌舞伎町タワー」
現在、「トイレ」となっている案内表記=東京・新宿の「東京歌舞伎町タワー」

内政で米民主党の思想に近づく

通常国会が閉幕した21日、自民党有志が「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」の設立総会を党本部で開いた。LGBT(性的少数者)理解増進法の成立で、公衆トイレや公衆浴場などでの女性スペースや、スポーツの女子競技への、いわゆる「トランス女性」(男性から性転換した女性)の参加など女性の安心・安全の確保問題が浮上している。この議連は、政府が策定する基本計画に自分たちの意見を反映させ、懸念に対応するために発足させたという。

出席したのは40人超だが、約80人が名を連ねている。中には、衆参本会議の採決時に退席したりして、同法に反対の意を示した保守派議員もいる。しかし、ほとんどは賛成した議員たちで、それが成立後、懸念への対応が必要だと訴えているのだ。それなら、なぜそんな欠陥を抱えた法律を成立させたのか、と普通の人間なら疑問に思うはず。

岸田文雄首相も「不安を除去しないといけない」(22日付産経新聞『阿比留瑠比の極限御免』)と議連設立に理解を示しているという。LGBTに対する秘書官(当時)の失言を発端に、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)前の法案提出を指示した首相自身も欠陥があることを認めているのだから、大いなる矛盾である。

与党案の修正(修正は日本維新の会・国民民主案をほぼ丸呑(の)みした)に合意して、自民党に助け船を出した形となった日本維新の会代表、馬場伸幸へのインタビュー記事が月刊「正論」7月号(「場当たり的自民に国民は不安・不満」)に載っている。その中で、馬場は次のように述べている。

「自民党が国民から不安や不満を持たれているのは、何か問題が起きても場当たり的に済ますからです。問題のある箇所をつぎはぎして、別の箇所が出血すれば絆創膏を貼り、骨折すればつっかえ棒をする、というようなことばかりやっているから、もう身体で言ったらガタガタです」

同法成立前のインタビューで、同法とは関係のない記事だが、同法成立と議連発足は自民党の場当たり的対応の典型と言える。4月の奈良県知事選と衆院和歌山1区補選では「自民党のオウンゴール」(馬場)で勝利した維新。同法でもオウンゴールの隙を突いて、自民からこぼれた保守票をすくい上げるのか。

一方、同法成立を巡っては、ネガティブな意味で存在感を示した人物がいる。日本にLGBT法の制定や同性婚の法制化を促し続けるエマニュエル駐日米国大使だ。同大使に対しては、保守論壇で激しい反発が巻き起こっている。情報戦略アナリストの山岡鉄秀「エマニュエル大使への公開質問状」、政治学者のロバート・D・エルドリッヂ「大使、それはあまりに乱暴(ランボー)ですよ」(以上「WiLL」7月号)、元参議院議員の松浦大悟「LGBTめぐる米民主党の画策」「正論」7月号)などだ。

ツイッターなどを駆使して、上から目線でLGBT政策を押し付けてくる同大使の高圧的な態度は「内政干渉」というのが共通した捉え方。それだけでなく「『これは令和のGHQだ』と怒りを表明する人もいる」(松浦)、「いまだに日本の主権は米国に奪われたままであるばかりか、GHQ時代に逆戻りしようとさえ」(山岡)していると、異口同音に反発する。

一方、福井県立大学名誉教授の島田洋一は「エマニュエル氏の言動を『アメリカの圧力』と捉(とら)えると間違う」と指摘する(「LGBT内政干渉 エマニュエル米大使の正体」「Hanada」7月号)。なぜなら、大使の言動は米国というより「米民主党のイデオロギーを体現したもの」で、「民主党が提出した連邦レベルの包括的なLGBT差別禁止法(名称は平等法)に、共和党が一致して反対する状況が続いている」という。

共和党が差別禁止法に反対する理由は主に三つ。①女性の安心・安全を脅かす②思想・信仰の自由を侵し逆差別を生む③LGBT教育が児童を混乱させる――だ。これらは、理解増進法に対する自民党議連の懸念と共通するものだ。

オウンゴールと言える同法の成立は、自民党内でLGBT問題において米国の共和党と共通認識を持つ保守派と、民主党政権に近いリベラル派の間の溝が広がっていることを浮き彫りにしている。

(森田 清策)

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