
譲歩引き出すも大阪で暗雲
公明党は5月25日、東京での自民党との選挙協力を解消することを決め、自民に伝達した。衆院小選挙区の「10増10減」に伴い新設される東京28区の候補者調整を巡って「信頼関係が地に落ちた」(公明・石井啓一幹事長)ことが理由だという。同時に石井氏は記者団に対して「あくまでも東京に限定した話。連立(政権)に影響を及ぼすつもりはない」とも強調した。
公明党機関紙「公明新聞」は翌26日の1面でこれを報じ、石井氏が党会合などで説明した交渉の経緯の概要も掲載した。それによると、公明はまず新設される東京29区について現職の擁立を決め、自民の了解を得た上で1月に公認を発表した。しかし、5月に自民党都連幹事長から「現場は応援しない」、党本部から「強い反発が残る」旨を伝えられ調整はいまだついていない。
同28区についても、自民に候補者がいないことを確認し、公明の擁立を「党本部として最大限努力する」と話を受けていたが、後に自民から「地元を説得して全面的に協力することが困難」と伝えられたという。公明新聞は石井氏の発言から「自民の対応、大変心外 誠実な協議と言えず」との見出しを取っている。同紙にしては珍しく、強い憤りを感じさせる文言だ。
「最終的な方針」として伝達を受けた自民の茂木敏充幹事長は、「持ち帰る」と返答し、30日に再び会談の場が設けられた。さらにほぼ同時刻に岸田文雄首相(自民党総裁)と公明の山口那津男代表も首相官邸で会談し、候補者調整を巡る対立を連立の枠組みに影響させないことを改めて確認した。また幹事長会談では、埼玉14区と愛知16区で自民が独自候補を立てず公明の支援に回る方針が伝えられ、自民が譲歩する形となった。
公明新聞はこのダブル会談もそれぞれ翌31日の1面で報じている。「政治の安定『揺るがさず』」「幅広い民意を生かす政権運営 自公でこそ」「埼玉14区 愛知16区 公明候補で早急に調整」といった見出しが並んだ。
解消された「東京での協力関係」には、来る衆院選のほかに都議選、首長選での選挙協力、都議会での連携も含まれる。国政選挙はともかく、それ以外の協力関係については、公明は2017年にそれまで続いてきた自公連携を解消して都民ファーストの会と手を組み、21年には再び自民と協力、というように近年は選挙のたびに行ったり来たりしているのが印象的でもある。
公明は大阪でも、市議会で維新に協力することで選挙区をすみ分け、共存関係を保ってきた。ただ維新が4月の統一地方選で圧勝し、大阪市議会で単独過半数を確保したことで、維新内からは次期衆院選で公明の現職議員がいる選挙区にも候補を擁立すべきだとの意見が出ており、馬場伸幸代表も公明との関係について「リセットする」と明言しており、公明にとっては暗雲が立ち込める。
選挙での協力関係が常に波紋を呼ぶ一部野党に比べると、公明はかなりうまく立ち回ってきていると言える。ただ、東京・大阪の2都市でその地の現与党との協力関係を解消することになれば地方にも全く無関係というわけにはいかないだろう。
自民の中には公明票で当落が左右される議員もいれば、協力に否定的な議員もいる。党員も同様である。今国会中の衆院解散は見送られたが、近いうちに衆院総選挙がある可能性は否定できず、候補者調整の着地点はまだ見通せない。
(亀井 玲那)






