トップオピニオンメディアウォッチ日野自・ふそう統合 EVだけが脱炭素化でない現実を評す保守系3紙

日野自・ふそう統合 EVだけが脱炭素化でない現実を評す保守系3紙

中国への対抗も鼓舞

各紙が指摘するように、特にトラックなど商用車が排出する二酸化炭素(CO2)の削減は「重い課題」(読売)であり、「強く求められるのが環境技術の普及促進」(日経)である。

それというのも、「国内では21年度の運輸部門の排出量のうち、約4割を貨物車が占めているという」(読売)からで、日経は世界の自動車によるCO2排出量のうち4割をトラックなどの商用車が占めると指摘する。

乗用車同様、商用車も脱炭素化が求められる所以(ゆえん)だが、その方法は自動車の特徴に合ったやり方で進めるのが合理的であり、現実的であるということである。

日野自の親会社であるトヨタ自動車グループは、FCV技術で「世界水準を誇っており」(産経)、三菱ふそうの親会社である独ダイムラートラックも「水素を燃料に使う燃料電池の開発で先行している」(日経)から、「統合による規模の拡大を、脱炭素に向けた電動化の推進などに生かしてほしい」(読売など)というわけで、妥当な見解である。

このほか、今回の経営統合合意を、商用車で台頭が著しい中国勢に対抗する意義として評価したのが日経と産経である。特に産経は、日野自・ふそうグループの世界販売台数は首位の中国第一汽車を上回る見込みだとして、経営規模の拡大によってコスト低減も見込め、「両社の強みを生かす提携戦略を描いてほしい」と鼓舞する。同感である。

今回の統合で国内商用車メーカーは、既にUDトラックスを傘下に収めたいすゞとの2陣営に集約される。日経は「ようやく再編が進んだ感が否めない」としながらも、「両陣営には健全な競争を通じ、次世代技術で商用車業界の停滞を打ち破るよう期待したい」と業界の活性化へエールを送るのである。

日野自再建を見守る

最後に、3紙とも指摘するように、日野自はエンジンの認証不正で大規模な出荷停止に見舞われた。読売は、今回の再編は日野自の再建をトヨタだけで後押しすることが難しいとの判断もあるのだろうとし、「他社の資本を入れることで経営の緊張感を高め、不正の根絶にもつなげるべきだ」と強調。産経も「コーポレートガバナンス(企業統治)を徹底的強化しなければならない」と訴えた。

日経は、三菱ふそうも三菱自動車時代も含めて2度のリコール(回収・無償修理)隠しが問題になったことがあると指摘。「特に経営再建中の日野自は襟を正した上で、統合を再起のきっかけとしたいところだ」が、「ただ、両社には反省だけでなく将来を見据えた取り組みに期待したい」と温かく見守る姿勢を見せた。(床井明男)

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