両派の声載せた読売
ただ、同性婚の急先鋒(せんぽう)とも言えるはずの朝日が4日現在、意外にもこの問題で社説を掲げていない。一連の訴訟では、福岡地裁が8日に判決を出すから、それを待っているのかもしれない。
ニュース記事に添える識者コメントでも当然、同性婚推進と反対で分かれたが、読売が両派を並べて公平を期す姿勢を見せたのは評価できる。その中で、推進派のコメントには首をかしげるものもあった。「違憲判断 ロジック明快」とした名古屋市立大大学院教授の小林直三(憲法学)のコメント(朝日)だ。判決が24条1項に「合憲」としながら2項には「違憲」では、整合性がとれないではないか。
それよりも、国士舘大客員教授の百地章(憲法)の方がロジックは明快だ。「憲法24条2項は、1項が前提とする異性間の婚姻に関連して法律を定めるよう求めており、違憲判決は疑問」(読売)だという。筆者はこちらを支持する。
裁判官の意見発表場
反対派のコメントで、もう一つ、筆者が注目したものがある。麗澤大教授の八木秀次(憲法学)は「裁判官の意見発表の場になっているため、結論が全部違っている。現行の法律婚、憲法適合性について必ずしも見解が統一されていないことが一連の判決から明らかだ」(産経)とした。
一連の5裁判でこれまでに出た判決は4地裁。大阪地裁は「合憲」、東京「違憲状態」、そして名古屋と札幌「違憲」。しかも、同じ違憲でも、名古屋は婚姻における「個人の尊厳」と「両性の平等」を定めた憲法24条2項と、14条「法の下の平等」に違反するとし、札幌は14条にのみ違反するとした。三者三様ならぬ各者各様なのだ。
新聞の社説や識者の意見が分かれるのは、ある意味、民主主義の社会では健全なことだ。裁判の判決でも、裁判官の思想に左右されることはある程度避けられない。根底に価値観が横たわる婚姻制度のようなテーマではなおさらである。しかし、本来、厳正中立であるべき判決が、八木が指摘するように「裁判官の意見発表」となって混乱する現実を踏まえれば、下級審の違憲判決だけで「国は法制化に動くべきだ」とするのは拙速過ぎよう。(敬称略)
(森田清策)