トップオピニオンメディアウォッチ米中覇権争いで岐路に立つ半導体産業の動向分析するダイヤモンド

米中覇権争いで岐路に立つ半導体産業の動向分析するダイヤモンド

製造装置では存在感

今回の特集では電気自動車(EV)、電池の動向も取り上げているが、あえて半導体に絞って見ていくことにする。

かつて半導体は“産業のコメ”として日本が世界を席巻していた時代があった。それが「今は昔」となってしまった昨今、先端半導体の製造は台湾積体電路製造(TSMC)が、半導体メモリーはサムスン電子とSKハイニックスの韓国勢が高いシェアを握り、半導体設計ソフトは米国3社の寡占状態となっている。

わが国はといえば半導体製造装置においてオランダと並んで存在感を示しているが、世界的な半導体不足が顕著になる中で半導体の確保は各国においても喫緊の課題となっている。ましてや半導体製造を担うTSMCの拠点の台湾を中国が武力侵攻も辞さない姿勢を見せている今日、地政学的リスクを抱えている現実を見てもわが国としては安穏としてはいられない。

こうした現状を踏まえ、日本政府も半導体産業に大きな方向性を打ち出しているが、ダイヤモンド誌はその方針について大きく3点を取り上げている。一つはTSMCの熊本県誘致と日米連携によるラピダスの千歳工場誘致である。このうち新千歳工場においては今年9月から半導体の試作ラインの建設が開始される。

二つ目のテーマは日本が強いとされるパワー半導体部門で、分散する企業の再編を目指す。パワー半導体は主流のシリコン半導体に比べ電力消費を大幅に抑える特性があることから、電気自動車の走行距離を伸ばす重要な部品。この分野において、わが国の企業も世界シェアに食い込んでいるが、各メーカーがバラバラでは主導権は握れない。今後の需要拡大が見込まれるパワー半導体に対し、世界の競争に打ち勝つために再編を促すという思惑がある。

米台韓と結束強化を

そして三つ目は半導体製造装置の対中輸出規制である。昨年10月に米国のバイデン大統領は軍事技術に転用されるリスクがある23品目の半導体とその製造工程の輸出を禁止し、日本もそれに同調したのである。

世界的な脱炭素化の流れの中で電気自動車の普及拡大が必至の状況下で半導体需要は拡大するばかり。米中の覇権争いの鍵が半導体をはじめとする先端技術や戦略物資の確保にあるとすれば、中国を包囲する意味でもわが国としては同盟国である米国、台湾、さらには韓国と結束を強めていかなければならないことは言うまでもない。

(湯朝 肇)

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