
「兵器化」する半導体
トヨタ自動車やNTTなど国内の主要企業が出資し、次世代半導体の国産化を目指す新会社ラピダスが今年3月、北海道千歳市に新工場を建設することを発表した。これに対し北海道や地元自治体は巨額の投資が期待され、数千人規模の雇用が生まれることから歓迎の意を表明した。もっとも、ラピダスの千歳工場建設は単に生産拠点を北海道に持ってきただけの話というわけではなく、そこには次世代半導体を取り巻く世界的な技術覇権争いの思惑が渦巻くという背景がある。
今や半導体は経済安全保障を担保する最重要品目となっているが、そうした半導体を巡る世界の動向を週刊ダイヤモンド(5月27日号)が特集している。見出しは「半導体 EV&電池 国家ぐるみの覇権戦争」。そのリードで「対中包囲網の構築と自国産業の競争力強化を両立させるため、日米欧の主要国は『半導体と電池におけるサプライチェーン(原材料・部品の供給網)』のチョークポイントを握ろうとしのぎを削っている」と綴(つづ)る。
そもそもチョークポイントとは、海洋国家の地政学における概念の一つ。その一地点を押さえることで航路全体や海域を制圧できる戦略上重要な海上水路を指す言葉だが、現在に至ってはある技術分野や産業分野において、性能やコストを実現するために必要不可欠な技術・部品なども指す。その中で半導体はあらゆる電子部品には欠かせない戦略物資となっており、米中の覇権争いが激化する中、ある意味で「兵器化している」と同誌は指摘する。